2020年12月18日号 Vol.388

話題作が続々映画化
ショウ配信は次世代へ
ブロードウェイ

3月半ばにあらゆる舞台公演が中止になって、9ヵ月が経過した。オンライン配信は、ライブ公演の不本意なオールタナティブから、必要不可欠なツールへと発展した。

秋以降、ブロードウェイの舞台を映画化した作品が次々に配信を始めた。従来、ブロードウェイには映画原作のミュージカルが多いが、その逆の現象が起きている。しかも単なる舞台の録画にとどまらず、何台ものカメラを駆使した高度な撮影、著名な映画監督の起用、劇場から飛び出した実写版など、確実に新しい次元へと進化している。

手軽な料金でどこからでも好きな時間にアクセスできるのは配信の利点だ。英語が母国語でない場合、字幕付きで見られるのも嬉しい。育児や介護、または身体面の事情などで外出が難しい人にも平等に機会が与えられるのもオンラインならではだろう。

7月にディズニープラスで配信を開始した「ハミルトン」は、最初の10日間で全米の約270万世帯が視聴した。ある調査によると、劇場に行くのは年に1回以下という視聴者の84%が「ライブの演劇をもっと観たい」と回答、新しい観客の開拓にも繋がっている。現在「ディア・エヴァン・ハンセン」、「ウエスト・サイド・ストーリー」、「ウィキッド」他の映画版も製作中だ。ブロードウェイの再開は早くとも2021年の6月。再開を心待ちに、バージョンアップした配信を楽しみたい。

この秋以降に配信が始まったオススメの5本を紹介する。偶然というか、今のアメリカ社会を映し出す作品が揃った。(高橋友紀子)

アメリカン・ユートピア
(HBO、HBO Max)

トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンによる斬新でスタイリッシュなロックコンサートをスパイク・リーが映画化。リーは、BLM運動を先取りしたような場面に、人種差別の犠牲者の家族の映像を加えた。ライブの音楽とダンス、セッションの喜びが伝わって来て、コロナ禍というディストピアを一瞬忘れさせてくれる。(劇評へ)

2021年9月17日より公演再開予定。
予告編: http://youtu.be/lg4hcgtjDPc


「アメリカン・ユートピア」Photo: David Lee/ HBO 楽器は手持ちで舞台上を動き回る。その振付がカッコイイ!

プロム
(Netflix)

2018年にブロードウェイで上演されたミュージカルが実写映画になった。プロムへの参加を禁じられたレズビアンの女子高生を救うために、落ち目のブロードウェイ俳優がインディアナに駆けつけ騒動を引き起こすという楽しいコメディ。(劇評へ)

メリル・ストリープ、ニコール・キッドマンらスター俳優が結集。
予告編:http://youtu.be/TJ0jBNa6JUQ


「プロム」Photo: Melinda Sue Gordon/ Netflix ブロードウェイの俳優を使うべきだった、という意見も…

ボーイズ・イン・ザ・バンド〜真夜中のパーティ
(Netflix)

マンハッタンの高級アパートの誕生日パーティに集ったゲイの男性たちの人生模様を描いたドラマ。1968年初演だが古さを感じさせず、2018年のブロードウェイ・リバイバルはソールドアウト。舞台版と同じく、ジム・パーソンズ、ザカリー・キント、マット・ボナーら全員ゲイであることを公言しているキャストが出演。
予告編:http://youtu.be/862Pb9oDDAo

What The Constitution Means To Me
(合衆国憲法はわたしにどんな意味を持っているか)
(Amazon Prime)

アメリカには「合衆国憲法はいかに素晴らしいか」をテーマにしたディベートコンテストがある。15歳の時にこのコンテストで勝ち抜いた女性が、憲法がいかに裕福な白人男性保護の視点で作られ、女性や移民を差別しているか、大人になってから気付いた事実を丹念に紐解いて行く。
予告編:http://youtu.be/P2zSRdVanDY

マ・レイニーズ・ブラック・ボトム
(Netflix)

1927年のシカゴを舞台に、ブルース歌手のマ・レイニーとバンドメンバーの確執や人種差別を描き出す。アメリカを代表する黒人劇作家オーガスト・ウィルソン作で、ブロードウェイで2度上演。今年43歳の若さで死去したチャドウィック・ボーズマンの遺作となった。若きトランペッター役の陰影ある演技は彼の最高作と惜しまれている。
予告編:http://youtu.be/ord7gP151vk


「マ・レイニーズ・ブラック・ボトム」Photo: David Lee/ Netflix 主演のヴァイオラ・デイヴィスとボーズマン(左端)の演技は必見!

HBO, HBO Max
Netflix
Amazon Prime




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