2020年12月18日号 Vol.388

医療従事者たちへ
トリビュート・コンサート
カーネギーホール

例年であれば年末恒例のきらびやかなコンサートが開かれるカーネギーホール。だが、今年はご存知の通り新型コロナウィルス感染拡大のため、公演はすべてキャンセル。しかしながら、このような時だからこそ可能な、意義あるコンサートをライブストリーミングすることが発表された。

イベント名は、「ライブ・ウィズ・カーネギーホール:ミュージック・アズ・メディスン(Live with Carnegie Hall: Music As Medicine)」。新型コロナウィルスのフロントラインで、身を賭して戦い続ける医療従事者たちへの、トリビュート・コンサートだ。(木川貴幸)


プロフェッショナルな医療従事者で構成された「ナショナル・ヴァーチャル・メディカル・オーケストラ」National Virtual Medical Orchestra


ジョシュア・ベル Joshua Bell (Photo by Phillip Knott)

音楽業界ではよく知られていることだが、医療従事者たちの中には、専門的に音楽を学習した経験を持つ人、そして抜群に音楽的才能に優れた人が数多くいる。大学付属の大型病院などでは、オーケストラが一つ二つ存在するのも珍しいことではない。そのような彼らに、音楽演奏の機会を…と企画された。

音楽性豊かな多くの医療従事者が出演する予定だが、中心となるのは、「ナショナル・ヴァーチャル・メディカル・オーケストラ(National Virtual Medical Orchestra)」(以下NVMO)。
この管弦楽団は、2020年の春、ボストン在住の指揮者、ジョン・マスコが中心となって結成された。メンバーは先述の通り、医者、看護師、医療研究者など、プロフェッショナルな医療従事者のみ。

ちなみに、アメリカにはおよそ20ほどの、いわゆる「メディカル・オーケストラ」が活動している。それぞれの音楽監督が推薦したメンバーによって、「NVMO」は構成されている。
これまでに、指揮者のマスコが一人一人のメンバーに楽曲を演奏、録画させ、オンラインで個別指導を繰り返し、そして楽団員全員が提出した音源をプロデューサーが編集し、発表している。

最初にリリースされたのは、ブラームスの交響曲第四番の第二楽章「アダージオ」。フェイスブックとユーチューブ(別記)で公開され、これまでに合計2万5千回以上の再生数を誇る。さらに、第二弾として公開されたのが、同じくブラームス作曲の「大学祝典序曲」。ブラームスの作品中、最も陽気で明るい曲と言われる同作。こちらもすでに3万5千回以上再生されており、人気の高さが窺える。

デジタル技術を駆使した編集技術がなければ、これらのプロジェクトは不可能だったことは否めないが、まずは高度な演奏技術を演奏者が持ち合わせていなければ、このようなレコーディング作品が生まれなかったことも事実だろう。

12月17日(木)、最前線で新型コロナウィルスと戦い続けている医療従事者のどんな演奏が視聴できるのか、楽しみだ。

なお、ゲストアーティストの登場も予告されている。こちらはプロフェッショナル・ミュージシャンで、現時点で発表されているのはスーパースター・バイオリニストのジョシュア・ベル。


(写真左)ジェイミー・ラレード Jaime Laredo (Photo by Christian Steiner)、(写真右)エマニュエル・アックス Emanuel Ax (Photo by Lisa-Marie Mazzucco)

もう一つ注目したいのは、50年以上に渡り、毎年ホリデーシーズンにコンサートを行ってきたニューヨーク・ストリング・オーケストラのオンラインイベントだ。|

コンサートはキャンセルとなったが、同楽団指揮者のジェイミー・ラレードと、彼の盟友ピアニストのエマニュエル・アックスとが、過去のコンサートや、これまでに行ってきた教育・啓蒙活動などを、貴重な映像を交えながら振り返る。

★Live with Carnegie Hallシリーズ
・Music as Medicine
■12月17日(木)7:30pmから視聴可能
・New York String Orchestra
■12月24日(木)7:30pmから視聴可能
■無料
■視聴:https://www.carnegiehall.org

★National Virtual Medical Orchestra
www.facebook.com/nvmorchestra
YouTubeチャンネル





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