2022年12月16日号 Vol.436

音楽で繋ぐ世界「グローバルフェスト」(1)
開催20周年、世界各地から10組出演

ニューヨークで産声を上げたワールド音楽祭「globalFEST(gF)」が、ついに20周年を迎える。近年はホームグラウンドとなる会場が定まらず何度かシアターを変えてきたが、今年はクラシック、オペラ、バレエの聖地リンカーンセンターに錨をおろし、1月15日にデビッド・ゲフィン・ホールで有観客で開催する。1月24日から26日の3日間は、NPRミュージックの「Tiny Desk Concert(TDC)」とのコラボレーションによるオンライン配信(ホスト:アンジェリーク・キジョー)も行い、昨年同様、ハイブリッドでファンを魅了する。(河野洋)
グローバルフェスト(以下gf)がスタートしたのは20年も前のこと。同時多発テロが起き、続くイラク戦争、時代は分断の暗黒時代だった。そんな時、音楽を通して、世界を一つにしようと、光を与えるべく生まれた。これまでに70ヵ国から200以上の音楽アーティストを、エンターティメントの中心であるニューヨークに集結。ファンを魅了し続け、チケットはソールドアウトの連続だった。今年も人種や国籍問わず、世界中から様々な編成、ジャンル、スタイルの10組のアーティストが、世界各国からやってくる。

ザ・レジェンダリー・イングラメッツ(The Legendary Ingramettes)

パンチの効いたゴルペルヴォイス
パンデミックからエンデミックとなり、人々は積極的に対面するようになったが、オンラインで手軽に楽しむことに慣れてしまった風潮が残る。そんな時代だからこそ、全身で聞いてほしいのが、アメリカ産のザ・レジェンダリー・イングラメッツだ。女性ボーカル特有の滑らかなボイス・レイヤーのハーモニーをバックに、地を揺れ動かすほどの力強いリードボーカルが、コロナ時代に終止符を打つかのようにオーディエンスを先導する。教会のゴスペルコンサートでお馴染みのノリノリの風景が目に浮かぶ。



NYミュージシャンによるアラブ音楽
ニューヨークは人種のるつぼ。まるで独立した国のように他都市と異なる独特の文化を醸し出す。2007年に誕生したニューヨーク・アラビック・オーケストラは、音楽を通してアラブ文化を紹介してきた。アラブの伝統音楽から現代音楽まで、セクステットから40人編成のアンサンブルまで編成のバリエーションを見せながら、精密かつ高度な演奏力で、アラブ音楽の真髄を聴かせてくれる。こんな異国文化をテーマにしたオーケストラが継続的に活動できるのもニューヨークならでは。

ニューヨーク・アラビック・オーケストラ (New York Arabic Orchestra)

デジタル・エイジのフラメンコ歌姫
アラブの瞑想的な世界から、スペインはアンダルシアへ場所を移し、ネオ・フラメンコの期待のシンガー、マリア・ホセ・イェルゴに耳を澄ます。激しい、情熱的な伝統的なフラメンコとは異なり、マリアは内に秘めた熱き思いを、温かいナイロン弦ギターの音色に悲しみを乗せて、優しい歌声でリスナーを抱擁する。

マリア・ホセ・イェルゴ (María José Llergo)

ブードゥー・ロックの王道
ハイチから海を越えてフランスに移住したムーンライト・ベンジャミンはブードゥー教の巫女として支えるシンガーソングライターだ。ギター、ベース、ドラムが生み出すシンプルかつヘヴィ・ロックの王道サウンドは、彼女のパワフルでブルージーな歌声をさらに力強く轟かす。70〜80年代の良きロック時代にタイムトリップできる音楽。

ムーンライト・ベンジャミン (Moonlight Benjamin)

ヴァイオリンとブルースギターの共演
イギリス人ギタリスト、ジャスティン・アダムスとイタリア人ヴァイオリニスト、マウロ・ドゥランテが生み出す弦楽器の音のコラージュは、まるでアラビア砂漠を俯瞰しながら、リスナーを絹の絨毯に乗せて、ゆったりと遊泳しながら、時間軸を未来へ進めていく。ポストコロナのアシッド・ロックか。(次ページへ)

マウロ・ドゥランテ(左)とジャスティン・アダムス(Mauro Durante & Justin Adam)

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