2018年12月1日号 Vol.339

メッセージ性強い作品群に
寄せられた多数の感想
ニッポン・アメリカ・ディスカバリー映画祭

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ほぼ満席だった「≒草間彌生 わたし大好き」

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「デンサン」で使用された「ハリネズミ」

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溝口さん(左)とオハラさん

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自らの体験を語る西倉監督

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日本から持参した「デンサン」のプレートを披露する金森監督(中央)

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(左から)主催・NADメンバーの河野氏、谷口氏、リノ氏と、ヌーンタン・エンターテイメント代表の中西氏


「知られざる日本」をアメリカで紹介することをコンセプトにした映画祭「第1回ニッポン・アメリカ・ディスカバリー映画祭(NADf2)」(▽共催:マークリエーション、よみタイム、RH+ ▽スポンサー:ヌーンタン・エンターテインメント)が、11月16日(金)と17日(土)の2日間に渡り、「アンソロジー・フィルム・アーカイブズ」で開催された。

オープニングを飾った「まっ白の闇」は、薬物依存症をテーマにした意欲作。内谷正文監督から届いたビデオメッセージで開幕した。家族で来場した高校生から「教育のために、全ての中学生・高校生は観るべきだと思う」という感想のほか、「メッセージ性が高くとても興味深かった」、「薬物依存症が一生治らない病気だとは知らなかった」などのコメントが寄せられた。

初日2本目は、性的少数者たちを映像に収めたドキュメンタリー「凍蝶圖鑑(いてちょうずかん)」。上映後、田中幸夫監督からのビデオメッセージが流され、英語字幕を担当した溝口尚美さんとショーン・オハラさんが登壇。田中監督の人柄や、制作時の裏話などを紹介した。来場者は、「予想していた程、『痛く』なかった」「ちょっとしたアート作品のようだった」と話していた。

2日目。1本目は日本人と非日本人の間に生まれた人々をテーマにしたドキュメンタリー「ハーフ」。上映後は、駆けつけた西倉めぐみ監督が登壇。監督自身が「ハーフ」であり、自らの体験からこの映画を制作しようと思ったことなどについて語ると、会場から多くの質問の手が上がった。来場者は「私は日本人だし、子どももハーフではない。でもこの映画は日本人として考えさせられる」「ハーフではないが、アメリカに住んでいるという状況には、共通するものがあると思う」「ハーフではない日本人が観るべき作品」など、多くの感想が寄せられ、関心の高さが窺えた。

2本目は、アーティスト・草間彌生を、1年半に渡って追ったドキュメンタリー「≒(ニアイコール)草間彌生 わたし大好き」。「時の人」ということもあり、会場は満席。アートに関心が高い人が多く、「アーティストの友人の姿が重なった」「前向きの姿勢を見習いたい」などの感想が寄せられた。

クロージングは、高岡鋳物発祥の地である富山県高岡市を舞台に、ものづくりの街の伝統と革新をテーマにした「デンサン」。ニューヨーク富山県人会のメンバー数人が応援に駆けつけた。上映後、日本から来米した金森正晃監督が登壇。映画内で実際に使用した「ハリネズミ」の鋳物と、同じく映画内で制作したタイトル「デンサン」のプレートを披露。「プレート制作期間は?」「費用は?」などの質問に答えながら、「エンディングの曲と歌詞も作られたのですね?」の問いに、「映画よりも、そっちの方に自信があります!」と答えると会場は笑いの渦に。来場者から、「ハリネズミはニューヨークでも買える?」「高岡に行きたくなった」「伝統工芸を継承することの大切さと難しさを学んだ」という意見に加え、父親が鋳型の着色職人だったという人からは、「父の作業現場を見たことがなかったが、この映画で父の知らない一面に出会えた様に感じた」というコメントが寄せられた。

両日共に来場し、全5作品を観賞した一人のアメリカ人は「5作品全てが良かった。私の心に特別なモノが残った」とし、4作品を観賞した人は「メッセージ性が高い作品ばかりで興味深かった」とコメント。主催者は、「今回は初回ということもあり、正直、苦労も多かったです(笑)。でもご来場頂いた方々に『面白かった!』『良かった!』とお声掛け頂けたことが、とても励みになりました。来年も良い作品を選び、継続していきたいと思います」と、第2回開催への意欲を覗かせた。


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