2021年11月26日号 Vol.411

現存する世界最古のオペラ
斬新な制作チームによる新演出
「エウリディーチェ」

A scene from Matthew Aucoin's "Eurydice." Photo: Cory Weaver / LA Opera

ギリシャ神話「オルフェオとエウリディーチェ」を題材にしたオペラは、これまで何度もオペラ化されてきた。イタリアの作曲家ヤコポ・ぺーリ(1561〜1633)が1600年頃に作曲した「エウリディーチェ」は、現存する世界最古のオペラだ。その後モンテヴェルディ作曲の「オルフェオ」(1607年)、グルック作曲「オルフェオとエウリディーチェ」(1762年)は、METでも度々上演される傑作。



今シーズンの「エウリディーチェ」は、2020年ロサンゼルス・オペラで世界上演されたマシュー・オーコインの作品。オーコインは1990年生まれ、ハーバード大学からジュリアード音楽院を経て、2013~15年にMETのアシスタント・コンダクターを務め作曲家、指揮者、ピアニスト、作家と多彩な才能を持ち、オペラもこれまで5作品仕上げている。

今回の新作は、これまでの作品と異なり、オルフェオの妻エウリディーチェを中心に物語が展開していく。またオルフェオ役のジョシュア・ホプキンスと異世界のオルターエゴ(別人格)として登場するヤコブ・ヨゼフ・オルリンスキは、バリトンとカウンター・テナーの対比が聞きどころ。

Erin Morley in the title role of Matthew Aucoin's "Eurydice." Photo: Paola Kudacki / Met Opera

演出のメアリー・ジマーマンは、METでもお馴染みの顔で、オペラのストーリーを最大限に表現する才能を発揮し、これまで「ランメルモールのルチア」「ルサルカ」などのヒット作品を手掛けている。ダニエル・オストリングの舞台美術、カティ・タッカーのプロジェクション・デザインなど斬新な制作チームとオーコインの音楽との合体で、これまでに無いオペラの世界に誘う。

A scene from Matthew Aucoin's "Eurydice." Photo: Cory Weaver / LA Opera

▼あらすじ
エウリディーチェは、オルフェオに浜辺でプロポーズされる。冥界では、エウリディーチェの父が娘に宛てて手紙を書くが、届けるすべが無く途方に暮れている。婚礼の日、エウリディーチェが謎の男のペントハウスに行くと父からの手紙を渡される。が、それを掴み取った時、つまずいて冥界に続く何百段の階段から転げ落ち死んでしまう。

彼女はエレベーターで冥界にたどり着くが、すべての記憶や言葉さえも失う。父親が彼女を出迎えるが、エウリディーチェは誰なのかわからない。現世では、オルフェオが嘆き悲しんで手紙を書く。冥界にその手紙が上空から落ちてくる。父親がその手紙を読みあげ、オルフェオの名前を聞くと記憶が徐々によみがえり父親のことも認識する。

オルフェオが冥界の門前で歌うと、謎の男ハデスが現れ、エウリディーチェを現世に連れ戻すには、オルフェオは決してエウリディーチェの方を振り向いてはいけないという規則を告げる。エウリディーチェは前方にいるのが、オルフェオではない、という恐怖に駆られてオルフェオの名前を呼ぶ。オルフェオは驚いて振り返ってしまう。愛する2人はなす術もなく引き裂かれていく。再び冥界へのエレベーターが降りてくる。その中にはオルフェオがいたが、すべての記憶は消し去られていた。

Eurydice
■MET初演/英語上演/2時間45分
■作曲:マシュー・オーコイン
■脚本:サラ・ルール
■演出:メアリー・ジマーマン
■出演:エウリディーチェ:エリン・モーリー
オルフェオ:ジョシュア・ホプキンス
オルフェオ(異世界):ヤコブ・ヨゼフ・オルリンスキ
ハデス:バリー・バンクス
エウリディーチェの父:ネイサン・バーグ
■11月23日(8pm)/27日(1pm)/30日(7pm)
12月4日(1pm)/8日(7:30pm)/11日(8pm) /16日(7pm)
www.metopera.org


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