2021年11月26日号 Vol.411

米国最大、JS収蔵の棟方コレクション
代表作含め100点紹介
「棟方志功〜板極道〜」

Shikō Munakata doing his morning warmup exercise: Calligraphy, NYC. © Béla Kalman. Courtesy of Museum of Fine Arts, Boston

著名な日本人美術家・棟方志功(1903〜75年)の作品100点を紹介する展覧会「棟方志功〜板極道〜」(むなかた・しこう〜ばんごくどう〜)が、12月10日 (金)から2022年3月20日(日)まで、ジャパン・ソサエティー(JS)・ギャラリーで開催される。

JSが所蔵する米国最大の棟方コレクションをもとに、「世界のムナカタ」と名をとどろかせた木板画だけでなく、書道、墨絵、水彩画、リトグラフや陶芸など、幅広い作品を紹介する。20世紀を代表する想像力豊かな芸術家・棟方の魅力に、今一度焦点を当てる。



展覧会の目玉の一つは、「東海道棟方板画」(1964年)の全作品。東京と京都を結ぶ東海道各所の風景を描いた、カラーとモノクロの61点の板画作品をすべて展示。棟方は、19世紀の浮世絵師・歌川広重(1797〜1858年)が、「東海道五十三次」で描いた東海道を大阪まで延長し、高度経済成長期における各所の風景を見事に捉えている。アメリカでの本シリーズ全作品公開は、1965年以来初。

棟方は20世紀の「創作版画」の流れを汲み、日本民話、仏教、西洋の文学や詩、自然のモチーフなど、さまざまなものからインスピレーションを得て、様々な表現法で創作した。伝統的な浮世絵サイズを超えた木板全体に広がる板画(ばんが/版画)を制作。これらの作品は、スイスのルガノ第2回国際版画展(52年)、第3回サンパウロ・ビエンナーレ(55年)、第28回ヴェネツィア・ビエンナーレ(56年)など、国際的に高く評価されていく。

「二菩薩釈迦十大弟子」から Ten Disciples and Two Bodhisattvas, 1939/1948. Photograph by Nicholas Knight. Courtesy of Japan Society

棟方は1959年、JSの「プリント・アーティスト・プログラム」フェローとして、ニューヨークに来た。このプログラムで招かれたアーティストには、草間彌生がいる。

今回の展示では、初来米を記念してJSのために制作された作品や、ニューヨークで制作された作品も展示される。6ヵ月間の米国滞在中、棟方は戦後の日本国憲法制定に貢献したベアテ・シロタ・ゴードン氏(1923〜2014年)と共に、ニューヨークを拠点に全米で講演や展覧会を開催した。

ゴードン氏はJS舞台公演部初代ディレクター。棟方の通訳を務め、生涯の友となった。その後棟方は、65年にJSの招聘で再びニューヨークに滞在。その際に、現在のJS棟方コレクションの核となる作品の多くを寄贈している。その他の重要な展示作品は、71年のジャパン・ハウス開設時に、3代目ジョン・D・ロックフェラー夫人からJSに寄贈されたものだ。

「東海道棟方板画」から Osaka: The Evening of the Crowded City, from the Tōkaidō Series, 1964. Photograph by Nicholas Knight. Courtesy of Japan Society

今回米国初公開となるのは、JS所蔵の棟方の代表作「二菩薩釈迦十大弟子」全巻と、第二次世界大戦中の疎開によって戦火を逃れたこの作品のオリジナル板木2点、それに作家の私物だ。これらの作品は棟方志功記念館と、棟方の実孫でもある研究者・石井頼子氏、そしてゴードン家の協力を得て展示される。

展覧会のデザインは、ニューヨークとバルセロナを拠点に活動する建築事務所、MAIOが担当。作品そのものを展示空間で生かし、鑑賞体験をサポートする新鮮なディスプレイを実現している。

Shikō Munakata: A Way of Seeing
■12月10日 (金)〜2022年3月20日(日)
■会場:Japan Society Gallery
 333 E. 47th St.
■一般$12、シニア/学生$10、JS会員/16歳以下無料
■Box Office:TEL: 212-715-1258
www.japansociety.org


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