2020年11月13日号 Vol.386

コロナ禍でアジア系への偏見増幅
NY市の差別撲滅キャンペーン
「私はまだ、私たちの街を信じている」


LIRRの「アトランティック・ターミナル」駅構内で展開中 All photos courtesy of NYC Commission on Human Rights

人権問題に取り組むニューヨーク市の機関「NYC人権委員会(NYC Commission on Human Rights)」は、新型コロナウイルスに関連した人種的な偏見を重く捉え、11月2日から、「私はまだ、私たちの街を信じている(I Still Believe in Our City)」と題したパブリックアート・キャンペーン=表紙=を開始。印象的なビジュアルとストレートなコピーで、差別行為を批判する。

トランプ大統領が「チャイナ・ウイルス」と呼称したことで拡大したといわれるアジア系への暴力や嫌がらせ。NYC人権委員会が受け取った新型コロナウイルス関連の差別は、今年2月から7月にかけて566件以上、その中でアジア関連は184件だったと発表。これは昨年の同時期(26件)の約7倍。今回のキャンペーンでは差別撲滅と同時に、偏見に晒されながらも立ち上がる「API」(Asian and Pacific Islander:アジアと太平洋諸島の人々)と、抗議運動「ブラック・ライブズ・マター」(以下BLM)を讃えている。


作品を手掛けたのは、タイ人の父と、インドネシア人の母を持つアジア系アメリカ人のアマンダ・ピンボディバッキア。神経科学者から芸術家に転向し、ブルックリンを拠点に活動、NYC人権委員会の招聘アーチストの一人でもある。

ジョージア州アトランタ郊外で生まれ育ったアマンダは、「数えきれないほどの反アジア的な偏見を受けた」と打ち明ける。あらゆる分野の人々を歓迎するニューヨーク市に、「できるだけ早く逃げ込みたかった」とし、自らを「ニューヨーカー」と呼ぶことに、誇りを持っているという。

キャンペーンは12月2日まで、ブルックリンの「アトランティック・ターミナル」構内で展開中(その他の配信・展示スケジュールは別記)。鮮やかな色調で描かれたアジアや太平洋諸島の人々の肖像画に、「あなたを病気にしたのは私ではない」「私はあなたのスケープゴート(責任転嫁の身代わり、生贄)ではない」などのメッセージが添えられたもの、BLMとの連帯を示した黒人の肖像画、「残虐行為の廃止」「正義」などのスローガンを掲げたものなど、45点を観ることができる。


ステイトメントでアマンダは、「今回のパンデミックで、都市の『醜い側面』が露呈したと感じています。私を含む多くのアジア系の人々が嫌がらせを受け、『国へ帰れ!』と罵倒され、人間性まで否定されました。このアートシリーズの目的は、私たちが受けた『傷』を、美しく強力なモノに変化させること。アジア系アメリカ人として、ニューヨーカーとして直面した、全ての差別的な行為に対して、『私はまだニューヨークを信じている』という方法を見つけたかったのです」と述べている。

力強く、挑戦的な目でこちらを見返す肖像画。見逃されがちな小さなコミュニティの経験を増幅させ、「私たちも同じ地域社会の一員である」ことを訴えている。

差別行為の報告を

NYC人権委員会は、「差別や嫌がらせを目撃または受けた場合は、オンラインや電話(別記)でレポートが可能です」と案内している。


I Still Believe in Our City
■Atlantic Terminal駅 (LIRR):12月2日(水)まで
■SNSで展開:11月12日(木)〜26日(木)
■LinkNYC・バス停で展示:12月14日(月)〜2021年1月10日(日)

★差別の報告先:NYC.gov/HumanRights
Tel: 212-416-0197



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