小林七郎によるテレビアニメ「シムーン」背景画、2006年
©創通・スタジオディーン/シムーン製作委員会
日本ギャラリーで11月16日(水)から22日(火)まで、「小林七郎:光と闇のドラマ」展が開催される。小林七郎(1932―2022年)は、テレビアニメ草創期から活躍したアニメ美術の第一人者。今年8月25日、89歳で他界した。1968年小林プロダクション設立。2011年までの46年間、数多くの作品で美術監督を歴任し、背景美術を手掛けた。2011年の文化庁映画功労賞をはじめ、受賞多数。2015・2017年には、パリで開催された「ジャパン・エキスポ」で講演したほか、2016年にはルーブル美術館ランス別館での展示会を開催した。2018年クウェート政府からの招待で講演と実技指導を行うなど、世界で高く評価された。
代表作は数知れず。「巨人の星」「ムーミン」「新オバケのQ太郎」「ど根性ガエル」「パンダコパンダ」「はじめ人間ギャートルズ」「元祖天才バカボン」「まんが世界昔ばなし」「宝島」「ルパン三世 カリオストロの城」「あしたのジョー2」「コブラ」、「ゴルゴ13」「うる星やつら」「タッチ」「少女革命ウテナ」「剣風伝奇ベルセルク」「ピカチュウたんけんたい」など、老若男女にお馴染みのタイトルがずらり。
「かつて観たこともない映像を」を合言葉に、アニメーション監督・出崎統(おさむ)(1943〜2011年)と組んだ「ガンバの冒険」「家なき子」では、テレビアニメの制約の中で、自由な発想と情熱で表現の可能性に挑んだ。省略と強調が特徴的な独自のスタイルと、実験的な技法の数々は、アニメーション表現の幅を大きく広げる礎となり、後進に大きな影響を与えた。
2011年小林プロダクションを閉所すると、画家として精力的に制作を続けた。生まれ育った北海道常呂郡置戸村(現・置戸町)の、厳しく美しい自然の記憶や、日常の美を捉えた具象の世界。シンプルで伸びやかなに非日常とオジリナリティーを探る抽象の世界。2つの世界で自らのイメージを追求した。
アニメーションがデジタル化される昨今だが、小林は「手業」の可能性と人間の無限の創造力を信じ、その継承を願った。
■11月16日(水)〜22日(火)
■会場:日本ギャラリー(日本クラブ7階)
145 W. 57th St.
■入場無料
■問合せ:gallery@nipponclub.org
■www.nipponclub.org