2019年11月1日号 Vol.361

英国で「ベスト・ニュー・オペラ賞」獲得
古代エジプトが舞台、多国言語によるオペラ
「アクナーテン」


A scene from Glass's "Akhnaten" with Anthony Roth Costanzo in the title role. All Photos: Richard Hubert Smith / English National Opera


Anthony Roth Costanzo in the title role of Glass's "Akhnaten."


A scene from Glass's "Akhnaten"


アメリカの作曲家フィリップ・グラス(1937年ボルティモア生まれ)は、科学、政治、宗教を題材にミニマル・ミュージックによるオペラ3部作を制作した。1作目は「浜辺のアインシュタイン」76年、続いて「サティアグラハ(マハトマ・ガンディーの前半生を描いたもの)」80年、第3作が本作品「アクナーテン」84年である。「アクナーテン」は、2017年に英国のローレンス・オリヴィエ賞でベスト・ニュー・オペラ賞を獲得した。
グラスは1965年、シタールの名演奏家シャンカールに出会い、衝撃的な影響を受けインド、アフリカ、アジアを旅行して独特な音楽の世界観を確立した。「アクナーテン」の制作にあたり、実際にエジプトに出向き、エジプト学者 からアクナーテンが実際に読んだと言われる歌のテキストを入手、多国言語によるフルオーケストラを駆使したオペラを完成した。
ケヴィン・ポラードによる絢爛豪華な衣装に身を包んだファラオ、アクナーテンに扮するアンソニー・ロス・コスタンゾはカウンター・テノールのスター。神秘的な美声が物語を盛り上げる。古代エジプトの壁画にインスピレーションを獲たマクダーモットの演出も興味深い。
▼あらすじ
舞台は、紀元前1300年代のエジプト。父であるアメンホテプ3世の死去に伴って第18王朝のファラオに即位したアメンホテプ4世は、勢力を増すアメン神の神官団排除のため、太陽神アテンを唯一神とする宗教改革を断行する。「アテンの精神」を意味するアクナーテンと改名し、神官たちを排除して新しい都市を建設する。アクナーテンは、伝説の美しい王妃ネフェルティティと愛し合い、6人の娘が生まれる。しかし追放された神官たちと古い宗教に慣れた民の不満は高まり、民に自由を与えるはずの計画は無残にも崩壊してしまう。(針ケ谷郁)

AKHNATEN MET初演 
■エジプト語、ヘブライ語、アッカド語上演
■11月8日(ガラ公演)、12日、15日、19日、23日(M)、
 30日、12月4日、7日(M)
■フィリップ・グラス作曲
■初演:1984年ロッテルダム
■演出:フェリム・マクダーモット
■衣装:ケヴィン・ポラード
■指揮:カレン・カメンセック(METデビュー)
■配役:アクナーテン:アンソニー・ロス・コスタンゾ
    ネフェルティティ:ジャナイ・ブリッジズ(METデビュー)
    ティイ王妃:ディーセラ・ラルスドッティル
    義父アイ:リチャード・バーンスタイン

■212-362-6000
metopera.org



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