2020年10月30日号 Vol.385

テーマ「時空を繋ぐ」
野村萬斎のビデオ狂言ほか
JS秋冬のバーチャル舞台公演

ジャパン・ソサエティ(JS)が今年秋から来年にかけ、バーチャルリアリティや、実験的公演環境の先駆的アーティストを招聘し、オンライン公演を行う。コロナ禍で舞台公演が制限を受ける中、これまでの舞台公演にはなかった斬新な作品を発表する。オンライン開催なので、これまでJSの劇場に来る機会がなかった遠方在住者にも楽しんでもらえるという利点がある。逆境を逆手に取り、オンラインならではの公演方法を試み、ライブ配信での質疑応答を設け、「ニュー・ノーマル」における新しいライブパフォーマンスの可能性を模索する。

プログラムは、ハイテク音楽から現代演劇、さらに古典を踏襲した新作狂言まで4つで構成。
ここでは、10月から12月末までの3つのプログラムを紹介する。

山田麗子
サウンド・インスタレーションと無声映画


サウンドアーティストの山田麗子による、オンライン演奏とインスタレーション。オンライン上に作り出された背景と、アコーディオン演奏、日本のクラシック無声映画を融合。「相撲」、「電車」、「20世紀前半のアニメーション」など、コロナ禍で楽しむ機会が減ってしまった「娯楽」をテーマにした。

20世紀初頭の無声映画を使用。最新のエレクトロニクス技術と、アコースティック音楽を駆使した新しい試みだ。


山田麗子 サウンド・インスタレーションと無声映画 Reiko Yamada © Carolyn Drake


現代日本戯曲
英語版リーディング シリーズ第15弾
「地底妖精」


今年の岸田戯曲賞受賞作家・市原佐都子による作品。英訳はアヤ・オガワ。人間と妖精のハーフとして生まれた若い女性を主人公に、孤独と包括、コミュニティに存在する意味など、パンデミックを経て浮き彫りになった社会的疑問に、タイムリーに呼応する。

演出は、ニューヨークを拠点に活躍する演出家タラ・アマディナジャド。従来の演劇形態にこだわらないライブ・アートを発信するグループ「Piehole」創始者の一人。

今回はオンラインの特性を生かし、観客参加型バーチャル・プロダクションに挑戦する。


「地底妖精」(top) TaraAhmadinejad © Emilie Soffe. (bottom) Satoko Ichihara © Mizuki Sato



野村萬斎・新作狂言「鏡冠者」
古典狂言「清水」


映画・テレビで人気の狂言師・野村萬斎によるビデオ狂言公演。作家いとうせいこうが、萬斎のために執筆した新作狂言と、古典狂言の2作品を紹介する。

新作狂言「鏡冠者」は、鏡を奉るための神酒をついつい飲んでしまった太郎冠者と、鏡の中から飛び出してきた自分の分身との奇妙な結末を描く、滑稽かつ怪奇な物語。

古典狂言「清水」は、主の命で茶会の水を取りに使いに出された太郎冠者が、仕事をなまけようとついた嘘のために、逆に大変な苦労をしてしまうという、古典狂言の定番作品。両演目とも野村による解説で始まる。


Bronze Bowl with Lace, 2013-14 (cast 2017-18). Photo by Tim Tiebout, Courtesy Philadelphia Museum of Art

「山田麗子 サウンド・インスタレーションと無声映画」
■11月4日(水)まで常時ウェブ視聴可能
■会員$12、一般$15
www.japansociety.org

「地底妖精」
■オンライン初演:11月18日(水)8:00pm(米東部時間)
※終演後アーティストとのライブQ&A
※その後12月4日まで常時ウェブ視聴可能
■会員$12、一般$15
www.japansociety.org

野村萬斎の新作狂言「鏡冠者」、古典狂言「清水」
■動画配信開始:12月9日(水)8:30pm(米東部時間)
※12月31日まで常時ウェブ視聴可能
■無料(JSウェブサイト上で要事前登録)
www.japansociety.org

■野村萬斎ライブトーク&Q&A:
12月12日(土)9:00pm(米東部時間)
※その後12月31日までユーチューブチャンネルで配信
www.youtube.com



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