2018年10月19日号 Vol.336

ヒッチコック映画で有名
オペラで観るミステリー
メトロポリタン・オペラ「マーニー」

マーニー
Marnie production photo from English National Opera. Photos by Richard Hubert Smith

マーニー


サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコックが映画化したウィンストン・グレアムの同名原作、「マーニー」(1964年)。映画では、幼少期のトラウマから異常な行動をとる女性マーニー(「鳥」で主演を務めたティッピー・ヘドリン)と、彼女を救い出そうとする男性(ショーン・コネリー)の心理的葛藤がミステリー仕立てに描かれた。
今回は、「TWO BOYS」を手掛けたアメリカの作曲家ニコ・ミューリーが、オペラ化したもの。
マーニー役には、謎の美女に雰囲気も声もハマったイザベル・レナード。マークを演じるクリストファー・モルトマンは、演技派のバリトン。注目はテリー役のイェスティン・デイヴィーズ、ブロードウェイミュージカル「ファリネッリと王様」で世紀のカストラートの歌声を務めたカウンター・テナー。
演出を手掛けるマイケル・メイヤーは、2007年「春の目覚め」でトニー賞を受賞したアメリカの代表的な演出家。2012年ヴェルディの「リゴレット」を1960年代のラスベガスに置き換えるという奇想天外な演出でセンセーショナルなMETデビューを果たした。今シーズンはヴェルディの「椿姫」の新演出手掛ける。
また衣装担当のアリアン・フィリップスは、大のオペラファンでもあるマドンナのスタイリストも長年務め、この舞台では1950〜60年代のファッションを再現した。そして指揮を担当するロバート・スパーノは、ボストン交響楽団で小澤征爾の助手を務めて研鑽を積み、現在アトランタ交響楽団の音楽監督を担っている。この作品でMETデビューを飾る。

▼あらすじ
舞台は1959年のアメリカ。ラトランド商会を経営するマークのもとに、美貌のマーニーという女性が仕事を求めて面接にやってくる。マークは、彼女が知り合いの会社の金庫から大金を盗んで消えた女であると見抜くが、彼女の盗癖を承知で雇う。マーニーは、またもや会社の金庫から大金を盗み姿を消してしまう。マーニーに心ひかれたマークは、彼女を探し出し、犯罪から救い出すためにも半ば強引に結婚する。しかし、マーニーは心を開かず、新婚旅行でもマークに指一本触れさせない。赤い色や雷におびえ、さらに男性を異常なまでに嫌い、盗癖を抑えることができないマーニーを見たマークは、彼女の過去になにか原因があり、それが無意識下に心的作用を起こしているのではないかと考える。実は、マーニーには一人暮らしの母親がいて、過去に男を殺した現場を、幼いマーニーは目撃していたのだった。
(針ケ谷郁)

MARNIE MET初演 英語上演
■10月19日/22日/27日/31日
 11月3日/7日/10日(M)
■作曲:ニコ・ミューリー
■原作:ウィンストン・グレアムの小説(1961年)
■演出:マイケル・メイヤー
■指揮:ロバート・スパーノ(METデビュー)
■配役:マーニー・エドガー:イザベル・レナード
    マーク・ラトランド:クリストファー・モルトマン
    テリー・ラトランド:イェスティン・デイヴィーズ
    ラトランド夫人:ジャニス・ケリー
    マーニーの母バーニス:デニース・グレイヴス
■チケット:212-362-6000
www.metoperafamily.org


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