2018年10月5日号 Vol.335

女子高生のスクールカースト
メッセージ性あるコメディ
「ミーン・ガールズ」

ミーン・ガールズ
水曜日はピンクの日。ケイディのダボダボのポロシャツはダミアンからの借り物 (l to r) Erika Henningsen, Ashley Park, Taylor Louderman & Kate Rockwell. All photos byJoan Marcus

ミーン・ガールズ
クラスメートのジャニスとダミアンは転校生のケイディにも親切 (l to r) Grey Henson, Barrett Wilbert Weed and Erika Henningsen

ミーン・ガールズ
身体のラインがくっきりと分かる服装にハイヒールが3人の定番 (l to r) Erika Henningsen, Ashley Park, Taylor Louderman, Kate Rockwell & Company


芸術の秋、ブロードウェイでも「キング・コング」など話題作の開幕が控えている。その前に、先シーズンのヒット・ミュージカル「ミーン・ガールズ」を紹介しよう。
原作は女子高生のスクールカーストを描いた2004年の学園コメディ映画。「fetch」という単語を「cool」という意味で使うなど、アメリカのポップカルチャーにインパクトを与えた。4月開幕の舞台版はトニー賞こそ無冠だったものの、チケット入手困難が続いた人気作。一見、キャピキャピでライトだが、強いメッセージ性を併せ持ち、女の子のエンパワメントを目指したミュージカルだ。

16歳のケイディは、両親の仕事の都合でアフリカのケニアからシカゴに引っ越して来た。ずっと家庭で教育を受けて来た彼女は初めての高校生活に胸を膨らませるが、初日から戸惑うことばかり。やっとジャニス、ダミアンと友達になれたケイディに、学園の女王的存在のレジーナからお声がかかる。レジーナをリーダーとする美女3人組は、学校中の生徒の上に君臨していた。最初は抵抗を感じていたケイディだが、次第にグループに取り込まれて行き…。

経過は割愛するが、学園ものらしくロマンスも押さえつつ、最後は大団円となるのは想像に難くないだろう。だが、ストーリー展開に目新しさはなくとも、友達間の陰口や仲間外れ、極端な外見重視など、現代のティーンが抱える深刻な問題にきっちり苦言を呈しながら、説教に走らずにコメディにとどめたバランスが絶妙なのだ。
映画、ミュージカルとも脚本はティナ・フェイ。人気バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」で初の女性ヘッドライターを務め、テレビドラマ「30 ROCK」では製作総指揮に脚本、主演まで果たしたコメディ界きっての逸材である。映画公開時には存在していなかったSNS等を取り入れて、陰口や失敗写真がまたたく間に拡散して行く様や疎外感を際立たせ、今の時代にぴったりな作品に作り変えた。デジタルテクノロジーへの依存や自分らしさを見失わないよう警告する真面目な歌に、あえて楽しいタップダンスをぶつけて来るなど、緩急の組み合わせは見事としか言いようがない。
ジェフ・リッチモンド作曲、ニール・ベンジャミン作詞の楽曲は少々長すぎるものもあるが馴染みやすいメロディー。華やかでパワフルなミュージカルを作らせたら天下一品の振付・演出家ケイシー・ニコロウ(「アラジン」)は、若く踊れるキャストの見せ場をふんだんに取り入れた。LEDパネルを使った映像は、ケニアの風景から教室へと瞬時に場面転換し、SNSの投稿で舞台を埋め尽くすシーンは圧巻。
レジーナ役のテイラー・ラウダーマンは外見、雰囲気ともにまさにはまり役。プレイビルに「実物はもうちょっとナイスです」と書いてあるところが可愛い。グレッチェン役のアシュリー・パークの「私のどこが悪いの?(What's Wrong With Me?)」は、コミカルでありながら彼女の悲痛な叫びが胸に迫る。ゲイの男子高生ダミアン役のグレイ・ヘンソンは要所で作品を締め、彼のダンスシーンはショーストッパー。この3人全員、トニー賞にノミネートを受けた。
アンサンブルでは、日本人女優の高橋リーザさんがブロードウェイ・デビュー。キレのある踊りにキュートなスマイルが印象的だ。

8月まではソールドアウトに近い状態だったが、秋になってチケットが取りやすくなってきた。現キャストの契約が切れる前に観て欲しいミュージカルである。(高橋友紀子)

Mean Girls
■会場:August Wilson Theatre
 245 W. 52nd St.
■$42.50〜
■上演時間:2時間30分
meangirlsonbroadway.com


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