2018年10月5日号 Vol.335

「私とは何者か」を問い続け
森村泰昌・NY個展
「エゴ・オブスキュラ / さまよえる日本の私」

オランピア
出発点とも言える「オランピア」 Portrait (Futago), 1988

三島由紀夫
三島由紀夫 A Requiem: Mishima, 1970, 2006

ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ Self-Portraits through Art History (Dürer's Hand is Another Face), 2016

モンロー
マリリン・モンロー Self-Portrait (Actress) / Marilyn at Tokyo University, Komaba, 1995–2008


1980年代末から日本現代美術シーンを牽引する森村泰昌(もりむら・やすまさ)が、ニューヨーク初の個展「森村泰昌:エゴ・オブスキュラ/さまよえる日本の私」を、ジャパン・ソサエティー(JS)・ギャラリーで開催する。
キュレーターは同ギャラリー・ディレクターの神谷幸江。展示するのは、名画や歴史上の人物に森村自身が扮するセルフポートレート作品。それらを通じて「私とは何者か」を問い続ける森村の、30年以上にわたる活動の集大成だ。

森村の出発点とも言える作品は、マネの「オランピア」に扮した作品「Futago」(1988年)では、西洋美術作品の中で描かれた女性に、アジア人男性である森村が扮することで、西洋中心の美術史に疑問を呈した。東西の複雑な文化的関係性、美術における性や人種描写について、ユーモアに富んだ視覚的解釈を加えている。
今回の展示は、森村の最新映像2作品(共に米国初公開)を中心に、さまざまな人物に扮した森村が浮かび上がらせる「私」というアイデンティティーの揺らぎを、社会政治的事象を辿りながら探求するもの。
その一つは、セルフポートレートを描いてきたことで知られる画家たちを題材にした長編映像作品「エゴ・シンポシオン」(2016年)。レオナルド・ダ・ヴィンチ、レンブラント、ウォーホール、ゴッホ=表紙写真=など、西洋美術史に名を残す12人の美術家に、森村が扮する。一般の美術史とは異なる大胆な想像的解釈を加え、「私」とは何か、日本人作家にとって西洋美術とは何かを問いかける。
もう1点は、パフォーマンス作品から展開した最新映像インスタレーション「エゴ・オブスキュラ」(2018年)。連合国軍最高司令官ダグラス・マッカーサー、昭和天皇、マリリン・モンロー、三島由紀夫をキーパーソンに、これらの人物となって登場する森村が、日本の戦後史、文化史を自身の個人史と重ねながら読み解く。

Yasumasa Morimura:Ego Obscura
■10月12日(金)~2019年1月13日(日)
■会場:JSギャラリー
333 E. 47th St.
■一般$12、シニア/学生$10、
JS会員/16歳以下無料
毎金曜6:00~9:00pm無料
■TEL: 212-715-1258
japansociety.org/gallery

★解説ツアー: スケジュールは問い合わせを
チケット所持者は無料(所要時間約1時間)


関連イベント

●パフォーマンス:美術家Mの「にっぽん、チャチャチャ!」
映像と独白ライブ。日本の戦後史、森村自身の個人史が交錯する「私」を語る。フランスのポンピドゥーセンター・メス、日本のシアターコモンズ、JS共同制作作品。終演後にレセプション有り。
■10月13日(土)7:30pm
※終演後レセプション有り
■一般$35、JS会員$28

●ハッピーアワー「エスケープ East @333」
展示鑑賞後、ライブミュージックでドリンクのひと時。詳細はウェブサイトで。
■10月19日(金)
■6:00〜9:00pm入場無料

●ブック・クラブ「森村推薦三島小説」
題材は、1950年実際に起きた金閣寺放火事件を基に描いた三島由紀夫の代表作「金閣寺」(1956年)。司会はコロンビア大学のグレゴリー・フルーグフェルダー。
■10月21日(日)2:00pm
■一般$15、JS会員$12



HOME