2021年10月1日号 Vol.407

コロナ規制、強化と緩和
刻々変わる“ブースター”情報

デルタ株の蔓延で、まだまだ終わらないパンデミック。州や各自治体によって異なるマスク着用ルールや、新型コロナウイルス・ワクチン接種の義務化状況、さらには接種済みの人へのブースターショット(追加接種)の必要性、旅行規制など、日々刻々と変わるコロナ事情。ここでは、9月末時点でのアップデートをまとめてみた。(※9月30日アップデート)

コロナワクチン接種を奨励するCDCの啓蒙ツール

ブースターショット、いよいよ開始

この夏からファイザー社が、3回目のブースターショットの必要性と安全性データをFDAに提示していた。米食品医薬品局(FDA)はそのデータを検証し、9月17日、2回のワクチン接種を終えた人のためのブースターショットについて、「65歳以上と、免疫機能に不安がある人(がん治療中など)のみに奨励する。2回目の接種から6ヵ月以上経過していること」と発表した。

FDAの言い分は、「ファイザー社他から提出された治験データを検証する限り、2回の接種で十分予防効果が持続していることが示されており、3回目の必要性を証明するデータはなかった」というもの。FDAの専門家の中には、3回目の接種の若年層への安全性を示すデータが不足していると指摘する者もいるとニューヨークタイムズ紙が伝えている。

このFDAのブースターショットの認可発表を受けて、米疾病管理予防センター(CDC)のワクチン審査委員会が9月23日に投票。全員一致で「65歳以上と、高齢者施設などの入居者に対して、ファイザー/バイオンテック製ワクチンのブースターショットを奨励する」とした。さらに、50〜64歳で何らかの持病を持つ人へのブースターショットにも13対2で賛成意見が多く、18〜49歳にも同様に賛成意見が多かった。

CDCの発表した基準に従い、9月24日、ニューヨーク、ニュージャージー、ペンシルベニア、デラウェアおよびウェストバージニア各州政府は、ブースターショットを開始。今回は、ファイザー社製ワクチンの2回接種が完了した上で、2回目の接種から6ヵ月以上が経過しており、さらに一定の条件を満たす者を対象に、3回目の接種(無料)が可能となる。9月30日時点でのブースターショットが受けられる対象者は以下。

★ファイザー社製ワクチンの2回接種が完了した上で、6ヵ月以上経過していることが条件
(1)ブースター・ショットを接種すべき対象者
●65歳以上
●50歳〜64歳で基礎疾患がある

(2)ブースター・ショットを接種できる対象者
●18歳〜49歳で基礎疾患がある
●職業上または組織上、感染リスクがある状況におかれている

(3)接種条件となる重症化のリスクが高い基礎疾患
癌、慢性腎臓病、肺疾患、知的及び発達障害、心臓病、免疫不全、重度肥満(BMIが40kg/m2)、肥満(BMIが30kg/m2以上40kg/m2未満)、鎌状赤血球症又はサラセミア、1型及び2型糖尿病、脳血管障害

ブースターショットは、最初の2回と同じワクチンを接種するため、今回はファイザー社製の接種者のみが対象。モデルナやジョンソン&ジョンソンのワクチン接種を受けた場合のブースターショットについては、現在、専門家が検討中。近日中に詳細が発表される予定。

ブースターショット関連情報
NY州:
https://covid19vaccine.health.ny.gov
CDC:
https://www.cdc.gov/coronavirus

12歳未満のワクチン認可は?

5〜11歳へのワクチン緊急使用認可を求め、ファイザー社は子どもへの予防効果と安全性を証明するデータをFDAにすでに提出している。ハロウィンまでに認可されるといった専門家のコメントも報道されたが、米メディアは「それは疑わしい」との見方。9月末現在、FDAはまだ認可していない。

CNNによると、ファイザー社は5〜11歳の2268人に対して、大人の有効成分量の3分の1の量を打ち、効果と安全性の証明データを取得しているとのこと。1回目と2回目の間隔は21日間で、大人と同じ。副反応も大人とほぼ同じ結果が出ているという。

子どもたちへの接種認可もどうやら間近に迫っているようだが、まだまだこれからの動きに注意が必要だ。



進むワクチン接種の義務化

ニューヨーク市では9月13日(月)から、特定の屋内活動について新型コロナウイルスのワクチン接種証明を義務化する措置「Key to NYC」を実施している。

対象となる活動は、▷屋内飲食、▷屋内フィットネス施設、▷屋内娯楽施設及び興業(劇場、美術館等の屋内施設も含む)。

これら施設の従業員はもちろん、12歳以上の施設利用者は、FDAまたは世界保健機関(WHO)が緊急使用認可している新型コロナウイルスのワクチンを、最低1回接種していることを示す証明を提出する義務がある。

証明として認められるのは以下の5つ。
①NYC・コビッドセーフ(NYC CovidSafe)
②エクセルシア・パス(NYS Excelsior Pass)
③接種時にもらう接種証明カード(CDC Vaccination Card)
④NY市が管理する予防接種記録(NYC Vaccination Record)
⑤NY市以外、又は米国外で発行された公的な接種記録

⑤については、氏名、生年月日、接種ワクチン名(WHO認可のもののみ)、接種日、接種場所または接種した人の名前が明記されていること。参考までに、WHO認可のワクチンは、ファイザー/バイオンテック、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン、モデルナ、シノファーム、シノヴァック、セラム・インスティトュートオブインディア。

※関連記事:ワクチン接種完了を、どうやって証明する?

Excelsior Pass Marketing Images: All photos courtesy of Governor Andrew Cuomo

日本のワクチン接種証明も有効

在ニューヨーク日本国総領事館が、ニューヨーク市市長室に問い合わせて確認したところ、「日本の証明書は有効であり、証明書の提示を歓迎する。ただし、証明書の受入れについての最終的な判断は事業主(施設側)にあり、市はこれを指導する立場にない」との回答があったそうだ。施設利用の際は、必要に応じて施設側に市は認めているという見解を伝えるようにと領事館はアドバイスしている。

在留邦人が一時帰国し、日本でワクチン接種を受けた場合の接種証明書(外務省発行)の申請方法は、外務省HP(www.anzen.mofa.go.jp)に掲載されている。
日本からの米国への入国の際には、日本政府が発行する「新型コロナワクチン接種証明書」の提示は求められていない。その代わり、渡航3日前までに行った検査での陰性証明が必要。ただし、これも流動的。

海外から米国入国
ワクチン接種者への規制緩和

米バイデン政権が9月21日(火)、ワクチン接種を終えている外国人入国者への規制を緩和することを発表した。同時に、未接種の米国人が海外渡航し、米国に再入国する際には、渡航先からの出発一日以内にコロナ検査を受け、陰性であることを証明する義務が付け加えられた。

新ルールの施行は11月初旬からの予定。これによって、外国人が米国に渡航する際は、ワクチン証明の提出とともに、出発一日以内のコロナ陰性証明の提出が求められる。提出に応じられれば、米国入国後の自主隔離は不要となる。

諸外国がワクチン接種者に対して入国規制を緩和する中で、米国はデルタ株の脅威を理由に厳しい規制を敷き、一定の国からの入国を禁止してきたが、ここにきてヨーロッパ諸国から「米国も足並みを揃えろ」とのプレッシャーがかかり、それにバイデン政権が応えての規制緩和となった。


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