2023年9月29日号 Vol.455

これまでにない
コンテンポラリーな構成で
メトロポリタン・オペラ開幕

①Ryan McKinny as Joseph De Rocher, Joyce DiDonato as Sister Helen Prejean, and Raymond Aceto as George Benton in Jake Heggie's "Dead Man Walking." Photo: Karen Almond / Met Opera

今シーズンは、9月26日から2024年6月8日までメトロポリタン・オペラ(以下MET)初演の4作品、新演出2作品、12の再演作品というラインナップ。さらに、メットオーケストラによる演奏会「ヴェルディのレクイエム」が3夜限定で開催される。

METは188 3年開設以来、主にヨーロッパの作品を中心に上演を続けてきたが、最近ではアメリカ人の作曲家、黒人の作曲家などの作品や、オペラの垣根を超えた様々なジャンルから演出家を積極的に取り入れている。今シーズンは、更にメキシコの作曲家によるスペイン語の演目も取り上げ、これまでになくコンテンポラリーな構成となった。


MET初演は、「デッドマン・ウォーキング」=写真①=(ジェイク・ヘギー作曲、9月26日プレミア)、「X、マルコムXの生涯と時代」=写真②=(アンソニー・デイヴィス作曲、11月3日初演)、「アマゾンのフロレンシア」=写真③=(メキシコの作曲家、ダニエル・カターン作曲、11月16日初演)、キリストの降誕を驚くほどドラマチックに再現したオペラ「エル・ニーニョ」(ジョン・アダムス作曲、2024年4月23日初演)。

②Will Liverman sings the title role in the Met premiere of Anthony Davis's "X: The Life and Times of Malcolm X." Photo: Zenith Richards / Met Opera

新演出は、「カルメン」=(ビゼー作曲、12月31日初演、現代に舞台を移した女性演出家キャリー・クラックネル演出)、「運命の力」(ヴェルディ作曲、2024年2月26日初演、戦時下の現代が舞台でマウリシュ・トレリンスキ演出)の二つ。

レパートリー作品は、「ナブッコ」(ヴェルディ作曲)、「ボエーム」(プッチーニ作曲)、「仮面舞踏会」(ヴェルディ作曲)、「タンホイザー」(ワーグナー作曲)、「魔笛」(モーツアルト作曲、英語版ホリデーオペラ)、「蝶々夫人」(プッチーニ作曲)、「トゥーランドット」(プッチーニ作曲)、「ロメオとジュリエット」(グノー作曲)、「つばめ」(プッチーニ作曲)、「ファイヤー・シャットアップ・イン・マイ・ボーンズ」(ブランチャート作曲)、「めぐり合う時間たち」(プッツ作曲)、「オルフェオとエウリディーチェ」(グルック作曲)以上12演目。

演奏会「ヴェルディのレクイエム」(ヤニック・ネゼ=セガン指揮、ソプラノ:リア・ホーキンス、メゾ・ソプラノ:カレン・カーギル、テノール:マシュー・ポレンザーニ、バス:ドミトリー・ベロセルスキー)は、9月27日、29日、30日に上演される。

③Ailyn Pérez as Florencia Grimaldi in Daniel Catán’s "Florencia en el Amazonas." Photo: Paola Kudacki / Met Opera

デッドマン・ウォーキング
1995年にアメリカで映画化されて一躍有名になった作品。ティム・ロビンス監督、スーザン・サランドン、ショーン・ペン主演。この作品でスーザン・サランドンはアカデミー賞主演女優賞を獲得。原作は死刑廃止論者である修道女ヘレン・プレジャンの実体験が基になっている。

カウンセリングを通してできる限りの策を練り死刑執行を阻止しようと奔走するも判決は覆らず、死刑囚の精神的アドバイザーとして最後まで寄り添うストーリーだ。レイプ、殺人など成人向けのテーマや強い言葉の描写が含まれる。

デッドマン・ウォーキングとは、死刑囚が死刑台に向かう際に看守が使う言葉である。この作品は2000年の初演以来、オーストラリア国内や、カルガリー、ドレスデン、ウィーンなどの海外はもとより、アメリカ国内でもニューオリンズ、セントルイスなど各地で上演され、現代オペラの作品で最も取り上げられている作品の一つ。作曲者のジェイク・ヘギーは2015年の新作オペラ「グレート・スコット」でグラミー賞を受賞している。(針ヶ谷郁)

DEAD MAN WALKING MET初演 英語上演
●作曲:ジェイク・ヘギー(1961年フロリダ出身)
●原作:ヘレン・プレジャンのノンフィクション作品
●台本:テレンス・マクナリー
●初演:2000年10月7日 サンフランシスコ 戦争記念オペラハウス
●演出:イヴォ・ヴァン・ホーヴェ
●衣装:アン・デュイ
●プロジェクション・デザイナー:クリストファー・アッシュ
●指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
●配役:シスター・ヘレン・プレジャン:ジョイス・ディドナート
ジョセフ・デ・ローシャ:ライアン・マッキニー
ミセス・パトリック・デ・ローシャ:スーザン・グレアム
シスター・ローズ:ラトニア・ムーア
■9月26日/30日(M/マチネ)
 10月3日/6日/8日(M)/12日/15日(M)/18日/21日(M)
metopera.org


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