2019年9月20日号 Vol.358

90年以上前の「衛生心得」12ヵ条
ポスターに見る日本社会
「日本赤十字社のポスター」



Japan Red Cross Society, K. Sakai (ca. 1925). All images courtesy of Poster House


今年6月にオープンした全米初のポスター専門ミュージアム「ポスター・ハウス」のローワーレベル・ギャラリースペースで、9月上旬から6ヵ月間の予定で、日本赤十字社のレトロなポスターが展示中。同館所蔵のコレクションで、1925年頃、日本赤十字社によって制作された9点。当時の子どもたちへ向けたもので、健康的な生活を送るための基本的な心構え「少年赤十字 衛生心得」を、カラフルな絵と文章で表したもの。教育ツールとして、日本中の学校に貼られていたという。

ノスタルジックな絵も興味深いが、「毎日読んで忘れないようにしましょう」と促す12ヵ条の「衛生心得」の内容が面白い。「起きた時と寝る前には歯を磨きましょう」「早く寝て早く起きましょう」「薄暗い所で本を読まないようにしましょう」などは、親が子どもに教える「常套句」のようなもの。「道路や床に唾や痰を吐かないようにしましょう」「咳やくしゃみをするときはハンケチで口鼻をおさえましょう」では公共の場でのマナーを教え、「呼吸は口を結んで鼻でしましょう」では鼻呼吸を促し、「(風呂の)お湯にいやがらないで入りましょう。爪は度々とるようにしましょう」では身体を清潔に保つよう指導する。90年以上前にまとめられた「衛生心得」だが、現代でも十分通用するようだ。
日本人向けのポスターにも関わらず、小さく英訳が記されていることについて、チーフ・キュレーターのアンジェリーナ・リッパートは、「第一次世界大戦後、日本は、『我が国はモダンで文明的であり、軍事力ではなく、人道主義を推進している』というメッセージを、西洋へ向けて発信しようとしたのではないか」と分析する。
展示数は少ないものの、当時の日本の片鱗を見ることができる貴重な資料。

Posters of the Japan Red Cross Society
■会場:Poster House
 119 W. 23rd St.
■大人$12、学生/シニア62歳以上$8
 18歳以下無料
posterhouse.org



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