2020年9月4日号 Vol.381

3つの新展示と共に再開
正面玄関にオノ・ヨーコのバナー
メトロポリタン美術館


①会場入り口正面に設置されたイサム・ノグチの「Kouros」  All photos by KC of Yomitime

8月29日(土)、3つの新展示と共にメトロポリタン美術館(以下メット)が再開した。分館の「メット・クロイスターズ」は9月12日(土)から再開。「メット・ブロイヤー」は閉館、「フリック・コレクション」に譲渡された。

メイン展示は、メット150周年を記念した「メイキング・メット1870〜2020」(2021年1月3日まで)。
メットのコレクションから250点を超えるアイテムを年代順に紹介。会場入り口には、19世紀にアフリカのコンゴ王国で作られた「power figure」、フィンセント・ファン・ゴッホの「La Berceuse」、イサム・ノグチの抽象彫刻「Kouros」=写真①=、オーギュスト・ロダンのブロンズ像「The Age of Bronz」、リチャード・アベドン撮影の「マリリン・モンロー」などが並び、コレクションの「多様性」を主張する。150年に渡り集められたアイテムを通して、メットが歩んだ流れを概説する企画展。

恒例の屋上展示「ルーフガーデン・コミッション」は、シリーズ8回目。今年はメキシコ出身のアーティスト、ヘクター・サモラの「ラティス・ディトゥア」=表紙写真と②=(12月7日まで)が設置された。

テラコッタ・ブロックを積み上げて作られた11フィートの壁は、中東やアフリカ、イベリア、ラテンアメリカなどで光と空気を取り込むために使用される「セロシア(celosía)」壁を参考にしたもの。マンハッタンの景色を遮る壁が、来場者に「障壁」を感じさせる一方で、壁に近づくことで格子状の隙間から壁の向こう側が見えてくるという二面性を持つ。円を描くように設置された壁が訪問者を誘導する。


②屋上に設置されたヘクター・サモラの「ラティス・ディトゥア」(部分)

2000年に死去した画家ジェイコブ・ローレンスの「アメリカの闘争」=写真③=(11月1日まで)。
ニュージャージー州アトランティック・シティ生まれのローレンスは、20世紀で最も有名なアフリカ系アメリカ人の画家。ワシントン大学で教授も務めた。自身の作風を「ダイナミックなキュビズム」とし、アメリカに住む黒人の生活を描いたことで知られている。

本展は、ローレンスの「闘争:アメリカ人の歴史から(Struggle: From the History of the American People)」シリーズを中心にしたもの。ほとんどのパネルには歴史から引用された一文が添えられている。ローレンスの視点は、現代アメリカが抱える人種問題と深く共鳴している。


③「闘争:アメリカ人の歴史から」パネル1

メット再開に先駆けた8月20日、正面玄関にオノ・ヨーコのバナー作品「ドリーム・トゥゲザー」が掲げられた=写真④=。コロナ禍で苦しむ世界に向け、希望と団結のメッセージを送ったもの。展示は9月13日まで。


④メット正面玄関に掲げられたオノ・ヨーコのバナー作品「ドリーム・トゥゲザー」

入館は時間指定チケットを予約し、マスク着用が義務付けられる。現在、グループ予約・見学は受け付けていない。火・水曜休館。

Making The Met, 1870–2020
■2021年1月3日(日)まで
Héctor Zamora: Lattice Detour
■12月7日(月)まで
Jacob Lawrence: The American Struggle
■11月1日(日)まで
Yoko Ono's DREAM TOGETHER
■9月13日(日)まで
■会場:The Met Fifth Avenue
 1000 Fifth Ave.
■大人$25、シニア$17、学生$12、12歳以下無料
※NY州居住者およびNY州/NJ州/CT州の学生は入場料任意
www.metmuseum.org



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