2021年9月3日号 Vol.405

ニューヨークとの繋がり
パペットが人々に与えた影響
「パペット・オブ・ニューヨーク」

展示風景 Photo by Filip Wolak / Puppets of NewYork

ニューヨーク市立博物館で8月12日(木)から、あやつり人形を集めた展示「パペット・オブ・ニューヨーク」が行われている。ニューヨーク市と「強い繋がり」を持つ人形100点以上を紹介。文化、政治、芸術的な側面から人形たちが人々に与えた影響や、どのようにNY市を変えてきたかを探る。



主な展示テーマは三つ。一つ目の「ステージ」では、20世紀に活躍したアメリカの操り人形師、ビル・ベアードとトニー・サーグのマスターワークから、ブロードウェイの「ライオンキング」や「アベニューQ」まで、人形がどのように演劇業界に浸透していったかを検証する。

二つ目、「セット」では、羊の「ラム・チョップ」=表紙写真=を操った腹話術師のシェリー・ルイス、「セサミストリート」の生みの親ジム・ヘンソンなどを紹介。NY市のメディア業界で人形劇が果たした役割、世界に向けた放映によるテレビの影響力などを調査する。

三つ目、「ストリート」では、チャイナタウンの旧正月、ハロウィン・パレード、政治的なメッセージなど、コミュニティに密着した文化、生活の中での人形にスポットを当てる。

展示風景 Photo by Filip Wolak / Puppets of NewYork

同展のキュレーターで、同館研究員でもあるモンク・ソロペス氏は、「人形は単なる子どもの遊び道具ではない。それぞれのコミュニティや文化的な変化、都市生活に影響を与えるような政治的出来事なども映し出している。世界各地からの移民が多いニューヨークでは、それぞれの出身地を反映・混合することで、人形劇を多様で奥深い『モザイク』に変化させた」と述べている。

①「ラム・チョップ」を操るマロリー・ルイス Photo by Asya Gorovits / Puppets of NewYork

生き続けるラム・チョップ

靴下で作ったことから「ソックス・パペット(靴下人形)」と呼ばれる「ラム・チョップ」は羊の女の子。生み出したのは、ブロンクス生まれの腹話術師、シェリー・ルイスだ。1957年、CBSの子ども向け番組「キャプテン・カンガルー」に初登場。次第に人気となり、シェリーは犬の「ハッシュ・パピー」や馬の「チャーリー・ホース」など、「ラム・チョップ」の兄弟も誕生させた。冠番組を持ち、5度のエミー賞に加えて様々な賞を受賞、「ラム・チョップ」は、世代を超えて愛された。

65歳でシェリーが世を去ると、娘のマロリー・ターチャーが「ラム・チョップ」を受け継ぐことに=写真①=。プロデューサーとして母に協力し、ショーにも参加していたマロリーは、マロリー・ルイスと改名、「ラム・チョップ」と共に活動を続けている。

②2019年5月1日、「Sesami Street」の除幕を行うデ・ブラシオNY市長と関係者 Photo courtesy : Paige Polk/Mayoral Photography Office

現実を変えたセサミストリート

マンハッタンにあるという設定の路地「セサミストリート」は、ファンの間で長年、「実際の場所はどこだ?」と話題になっていた。

2009年、同番組40周年を記念し、ブルームバーグ前NY市長が、セントラルパーク西側の63ストリートを一時的に「セサミストリート」と改名。さらに誕生50周年を迎えた2019年、デ・ブラシオNY市長が、ブロードウェイと63ストリートの交差点に「セサミストリート」の標識を設置し=写真②=、恒久的なものに。除幕式にはマペットたちも参加、誕生を祝った。

ニューヨーク市立博物館への入場は時間予約制で、最低1回のワクチン接種証明と身分証明の提示が求められる。2歳以上すべての来場者はマスク着用のこと。

Puppets of New York
■2022年4月3日(日)まで
 金〜月10am–6pm(火〜木:休館)
■会場:Museum of the City of New York
 1220 Fifth Ave at 103rd St.
■大人$20、学生/シニア(65+)$14
 20歳未満無料
https://www.mcny.org


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