2020年8月21日号 Vol.380

新型コロナとの闘いから得られた教訓
〜東京とNY〜

コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所(CJEB=Center on Japanese Economy and Business)が8月13日、日本とニューヨークを結び、ウェビナー「新型コロナとの闘いから得られた教訓、東京とNY」を開催した。CJEBウェビナーシリーズ「コロナ時代の日本経済」の一環だ。日本から感染症専門家・尾身茂医学博士、ニューヨークから多臓器移植の世界的権威・加藤友朗医師がパネリストとして参加。コロンビア大学国際関係公共政策大学院の伊藤隆敏教授が司会を務め、これまでの体験を基に、今後どのように新型コロナと闘うべきかを考えた。



このウェビナーには世界30ヵ国以上からの参加登録があり、海外在住邦人がいかに日米のパンデミックの行方に注目しているかが窺える。ウェビナーでは、経済学者の伊藤教授をモデレーターに、日米の医療専門家が、両国のパンデミックの状況と対策について意見を交換した。

ニューヨークとアメリカの事情については、ニューヨーク・プレスビテリアン病院勤務の加藤医師が話をし、日本の事情については新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身会長が説明した。それぞれの立場から現状を報告するとともに、今とるべき対策や今後の方向性などついて話し、医療と経済の関係や、その間でバランスをとることの難しさなどを語った。

尾身会長といえば、パンデミック報道で日本のテレビでもお馴染みの専門家。また加藤医師は、パンデミック初期に感染し、入院を体験した「患者」でもある。3週間の入院で人工呼吸器による治療を受け、無事退院した。この修羅場を経験したこともあり、今後のパンデミックの展開に思うところは深いようだった。

ウェビナーのディスカッションでのトピックは、日本が取った独自の対策と、その一つであるクラスター対策(さかのぼり接触者調査)、PCR検査の必要性や日米での検査数の違い、日本で今後増やしていく方向性のほか、強制力を持った政府命令の必要性にも話が及んだ。

ウェビナーの議論の背景として、モデレーターを務めた伊藤教授が東京とニューヨーク州・市の新型コロナ比較をまとめている。ここに抜粋を紹介する。

①新規感染者数、アメリカ(NYとNY以外)2月1日〜
アメリカでの感染エピセンターと言われていたNY州が、慎重な経済活動の再開により、その後全米に感染が拡大しても、NY州では増えていない。



②東京は第2波? 経済活動再開を急ぎすぎた?
一方の日本は第一波の後、感染が減ったが、今また第二波に突入にしているようにみえる。日本の感染件数の3分の1から半分は東京。第一波以降、感染が増えていないNYとは対照的。



③人口10万人当たり、新規感染者数(7日間平均)
東京、ニューヨーク州、ニューヨーク市

人口10万人あたりの新規感染者数(7日間平均)は、6月1日時点でNY州6.73人、NY市約8.53人、東京は0.09人。が、NY州・市はその後減少を続け、6月末から8月11日まで4人前後で横ばいなのに対し、東京は増加を続け、特に第二波で増加率が急増。8月11日時点ではNY州3.27人、NY市3.59人、東京2.30人と、その差はわずかに1人となっている。


④死亡者数は日本が圧倒的に少ない。累積死者数で見ると、8月12日現在東京336人、NY州2万5218人、NY市1万6331人。死亡率も日本が2%と低い。NY州は6%、NY市7.1%。

⑤PCR検査数は日本が圧倒的に少ない。7日間移動平均で8月11日現在、日本1万8517件、NY州7万1721件、全米では72万1880件。

⑥検査での陽性率(7日間新規感染者数/7日間PCR検査数)は、東京がかなり高い。8月11日現在、東京6.6%、NY州0.9%。7、8月の感染状況は、ニューヨークよりも東京の方が悪化している。

※①〜③のグラフ:ウェビナーの資料から。各政府機関発表の統計に基づき作成©伊藤隆敏

ウェビナー参加者アンケート
日本での新型コロナ感染者数は今後どのように推移すると思うか


ウェビナー開催中、「日本での新型コロナ感染者数は今後どのように推移すると思うか」というアンケートが実施された。以下の4つの選択肢が提示され、参加者がそれぞれズーム上でクリックした結果。


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