2020年8月21日号 Vol.380

巨大ゴリラのブロンズ像が誕生
絶滅危惧種の保護を訴え
パブリック・アート「キング・ニャニ」

ハドソンヤードのベラ・アブズグ・パークに8月24日(月)、巨大なゴリラ像「キング・ニャニ」(スワヒリ語でゴリラの意味)=表紙写真と①=が誕生。ひじをついて横になった姿勢の像は、高さ8.5フィート(約2・6m)、全長22.9フィート(約7m)で、ブロンズのゴリラ像としては世界最大だ。


①完成イメージ。設置場所はマンハッタンのハドソンヤード、ベラ・アブズグ・パーク King Nyani, Photo courtesy of Gillie and Marc Schattner

手掛けたのは、オーストラリアの夫婦アーティスト、ジリーとマーク・シャトナー。ふたりはアーティストとしてのキャリアの大部分を、絶滅危惧種を救うためのプロジェクト「ラブ・ザ・ラスト(Love The Last)」に捧げる。動物の像を都市に設置し、自然との繋がりを人々に思い起こさせることで、動物保護への行動を促す。

2018年3月、マンハッタンのアスタープレイスで、当時、世界で3頭しか生存していなかったキタシロサイをモデルにした高さ17フィート(約5.2m)の像「ラスト・スリー(The Last Three)」を発表。ところが設置の3日後、オス1頭が死亡。メス2頭だけとなり、絶滅を物語る像の象徴に。その後、像はブルックリンのメトロテック・コモンに移動し、現在はテキサス州のサン・アントニオ動物園に永久設置。また、同作の小さなサイズ「The Last Three on This Planet」=写真②=は、マンハッタンのミッドタウン・ウエストに設置されている。


②「ラスト・スリー・オン・ザ・プラネット」Photos by KC of YOMITIME

今回の「キング・ニャニ」も、「ラブ・ザ・ラスト」プロジェクトの一環。密猟や戦争、森林破壊が原因で、野生のマウンテンゴリラは現在、1000頭ほどが生息するのみ。制作のきっかけは、ジリーとマークがウガンダを旅行中に出会ったマウンテンゴリラの家族。ジリーは、「ゴリラは危険な動物だと考えられていますが、彼らはとても愛情深く、家族思いであることを世界に知らせたかった」と述べている。
また、映画「キングコング」で女性を手に乗せるシーンにインスピレーションを受け、訪問者が「キング・ニャニ」の手のひらに座れるように設計。「人々が手に座り、その穏やかな顔を見上げることで恋に落ち、ゴリラを救う運動に参加することを願っています」と説明している。

ジリーとマークの作品は、ニューヨーク市内9ヵ所(「キング・ニャニ」を含む)で見ることができる。
グランドセントラル駅近くにあるウサギと犬のブロンズ像「テーブル・オブ・ラブ(Table of Love.)」=写真③=は、ジリーとマークの「分身」とも言えるキャラクター。世界100都市・100体の像で構成される「トラベル・ウィズ・ラブ(Travel With Love)」のひとつで、ウサギ(ジリー)と犬(マーク)が、テーブルで向かい合ってコーヒーを飲んでいる姿だ。訪問者が2脚の空席に座ることで、「全ての人々がひとつになる」ことを象徴、互いの理解を深めるための対話を促している。


③「テーブル・オブ・ラブ」Photos by KC of YOMITIME

King Nyani
■8月24日(月)から11ヵ月展示予定
■会場: Bella Abzug Park
 Hudson Blvd. bet. W. 36 St. & W. 33 St.

The Last Three on This Planet
■会場: 441 Ninth Ave.

Table of Love
■会場: 237 Park Ave.

us.gillieandmarc.com



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