2022年8月19日号 Vol.428

実験映像作家
飯村隆彦 逝く

撮影:大口 肇

享年85歳。7月31日、日本の実験映画のパイオニア、飯村隆彦が東京都内の病院で死去した。

飯村は、東京、ニューヨークを主な拠点に、ヨーロッパでも活躍、「前衛」という言葉が最もフィットした作家であった。同時代の作家たちの多くが去ったあとも、60年以上にわたり一貫して奇抜とも言える手法で映像制作を試みた。60年代にオノ・ヨーコ、赤瀬川原平、現代音楽の小杉武久、暗黒舞踏の土方巽ら前衛芸術家たちとの親交を通じて8ミリや16ミリカメラを使い、近年では世界各国で上映され8つの賞を獲得した「あいうえをん 6面相」などビデオも駆使して「個人映画」を制作し続けた。



64年、大林宣彦、高林陽一、ドナルド・リチーらと「フィルム・アンデパンダン」を結成。65年に発表の作品「LOVE」がビレッジ・ボイス紙上で巨匠ジョナス・メカスに絶賛されニューヨークデビューを果たす。

74年にMoMAで、79年にホイットニーで個展とインスタレーションを行い、国際的にも評価。89年にMET美術館の委嘱で撮影した竜安寺石庭を元にした作品「間:竜安寺石庭の時/空間」を建築家の磯崎新、作曲家の小杉武久の協力で制作。01年にMoMAで2度目の個展を開催。15年に、第19回文化庁功労賞を受賞した。最近まで新たな作品制作に意欲を燃やし準備に余念がなかった。(塩)


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