2023年8月18日号 Vol.452

邦画10本を無料配信
多様性を支える地域文化
「JFF+インディペンデント・シネマ」

①渡辺紘文監督「テクノブラザーズ」

国際文化交流を実施する日本の専門機関「国際交流基金(ジャパン・ファウンデーション)」が10月末まで、海外の視聴者を対象にオンライン日本映画祭「JFF+ インディペンデント・シネマ2023」を展開中だ。

日本の映画文化における多様性を支え、地域文化に彩を与えている「ミニシアター」に焦点を当てた企画で、2022年に始動。今回はその第2弾として、日本各地のミニシアターや世界の映画人から推薦を受けた邦画10本(別記参照)と、ミニシアター10館を紹介した映像を無料配信している。ここでは編集部が独断で選んだ数本を紹介したい。


渡辺紘文監督の「テクノブラザーズ」=写真①=は、正体不明のミュージシャンが繰り広げるロードムービー。

荒涼とした関東平野に、テクノ音楽の爆音が響き渡る。演奏するのは3人組ミュージシャン、テクノブラザーズ。ある日、彼らは自分たちの音楽をレコード会社に売り込むため、冷酷なマネジャー・氷室と共に東京を目指して旅に出るが…。

本作はイタリアで開催された世界最大のアジア映画祭、第25回ウーディネ・ファーイースト映画祭でワールドプレミア上映され、熱狂的な反響を呼んだ。

②富田克也監督「典座 -TENZO-」

富田克也監督の「典座 -TENZO-」=写真②=は、道元禅師が著した「典座教訓」を軸に、3・11後の日本における仏教と信仰の意義と在り方を探求したドキュメンタリー。

推薦館のjig theaterは、「信仰を考える上で、これほどまでにストレートな作品はない。フィクションとドキュメンタリーという枠を無効にするほどの力強さがある」と推す。

③高橋名月監督「左様なら今晩は」

高橋名月監督の「左様なら今晩は」=写真③=は、人気漫画家・山本中学による同名コミックを映画化したファンタジー・ラブコメディ。同棲していた恋人に振られた陽平の部屋に、女性の幽霊が現れる。最初は煙たがり、何とかして除霊しようとする陽平だったが、人間の女の子と変わらない彼女との時間に、居心地の良さを感じ始める。

オール尾道ロケ作品で、本作を推薦したシネマ尾道も劇中に登場。「とにかく尾道の景色が美しい。地元の人も気付かない街の魅力を引き出した演出力とカメラの力が際立つ秀作」と称賛。

④東盛あいか監督「ばちらぬん」

東盛あいか監督の「ばちらぬん」=写真④=は、生命力溢れる与那国島の映像美に酔うドキュフィクション。

「ばちらぬん」とは沖縄県与那国島の言葉で「忘れない」という意味。島の日常や祭事、文化、風景を収めたドキュメンタリーと、花、果実、骨、儀式などをモチーフに幻想的に紡がれる世界が交錯。フィクション、ドキュメンタリーの枠を超えた土地と人々の物語。

⑤山崎佑次監督「鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言」

山崎佑次監督の「鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言」=写真⑤=は、最後の宮大工の言葉と所縁ある人々の語りで織りなすドキュメンタリー。

法輪寺三重塔、薬師寺金堂・西塔の再建を手がけ、飛鳥時代から受け継がれる寺院建築の技術を後世に伝えた西岡常一(1908年〜1995年)。千年先へつないでゆく途方もない時間の流れが、記録映像とインタビューから浮かび上がる。

全作品詳細は、オフィシャルサイトで。

FF+ INDEPENDENT CINEMA 2023
■10月31日(火)まで
■視聴無料(要登録)
■視聴サイト:
 https://jff.jpf.go.jp/watch/ic2023/

★作品ラインナップ
■鬼に訊け 宮大工 西岡常一の遺言(2012年)
 監督:山崎佑次 / ドキュメンタリー / 88分
■光を追いかけて(2021年)
 監督:成田洋一 / ドラマ、SF / 104分
■ミューズは溺れない(2022年)
 監督:淺雄望/ ドラマ、ロマンス / 82分
■ばちらぬん(2021年)
 監督: 東盛あいか/ ドキュメンタリー、ドラマ / 61分
■おーい!どんちゃん(2022年)
 監督:沖田修一 / ドラマ、コメディー / 157分
■左様なら今晩は(2022年)
 監督:高橋名月 / ドラマ、ロマンス / 98分
■盆唄(2019年)
 監督: 中江裕司/ ドキュメンタリー / 134分
■わたしの見ている世界が全て(2022年)
 監督:佐近圭太郎/ ドラマ / 82min
■典座 -TENZO-(2019年)
 監督:富田克也/ ドキュメンタリー / 59分
■テクノブラザーズ(2023年)
 監督:渡辺紘文 / コメディー、音楽 / 97分


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