2019年8月6日号 Vol.355

宇宙と地球の関係性テーマに
アーティスト9人、野外アート
「クロノス・コスモス」


① Oscar Santillán, SOLARIS: THE DESERT LOOKING BACK AT ITSELF, 2017 (All Photos by YOMITIME)


② Miya Ando, 銀河GINGA (SILVER RIVER), 2019


③ Alicja Kwade, REVOLUTION (GRAVITAS), 2017


④ Eduardo Navarro, GALACTIC PLAYGROUND


⑤ Radcliffe Bailey, VESSEL III, 2018


クイーンズのロングアイランドシティ、イースト・リバー沿いにある公園「ソクラテス・スカルプチャー・パーク」で「クロノス・コスモス」と題した、9人のアーティストによる野外アート展が開催されている。同園はパブリックアートの展示のみならず、ヨガクラスやグリーンマーケット、映画上映など、30年以上に渡ってコミュニティー活動をサポート。年間およそ8万9000人が訪れている。

本展は、宇宙と地球の関係性をテーマに、時間と空間の繋がりを表現したもの。
公園入口、頭上に設置されたビルボードは、エクアドル共和国生まれのオスカー・サンティランによる「ソラリス」=写真①=。チリのアタカマ砂漠で採取した砂を使った独自のレンズで撮影したアタカマ砂漠の風景だ。サンティランは砂漠で、太陽、星、月との関係を捉えながら撮影。中央にぼんやりと見える「顔」のような影は、砂漠が知識を持った対象者であったことをほのめかしている。

園内で一番目を引く「銀河(シルバー・リバー)」=写真②=は、日本とロシア、2つのルーツを持つアメリカ人のミヤ・アンドウ(安藤美夜)によるインスタレーション。
長さ200フィートの布に星が瞬く夜空を表現。頭上で風にゆれながら、公園を蛇行するように設置された「銀河」は、流れる川と星の動きを関連付けた。日本語で銀河を「天の川=空に浮かぶ星の川」と捉えることを視覚化し、自然に対する人間の想像力を賛美する。同時にアンドウのきらめく織物は、日本の神話「七夕」と、天の旅を祝している。

ベルリンを拠点に活動するポーランド人女性、アリッサ・クワドの「革命(グラビタス)」=写真③=。交差する3つの輪に石を組み込んだオブジェは、惑星の軌道とニールス・ボーアの原子模型を連想させる。円は「時間」と「反復」を意味し、全てのモノは相対依存していることを表現。タイトルの「革命」は、アインシュタインの一般相対性理論(重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる)によって起きたパラダイムシフトを思い返させる。(クワド作の「ParaPivot」は、メトロポリタン美術館の屋上庭園で展示中。10月27日まで)

アルゼンチンのブエノスアイレス生まれ、エドゥアルド・ナバーロの「銀河の遊び場」=写真④=。巨大な日時計で、色分けされた六角形の部分に様々なメッセージが書き込まれている。「太陽はブロンズの鍵。その鍵で内面のドアを開きなさい」「風は動物。ペットにしよう」など、来場者へ広い世界観を示し、空想を促す。

ニュージャージー州出身、ラドクリフ・ベイリーの「ベッセル III」=写真⑤=は、スチール製の「超音波」スカルプチャー。外観はバンカー(燃料を入れておく貯蔵庫)と、宇宙カプセルをイメージ。内部上にはスピーカーが仕込まれた巻き貝が浮かぶ。海、鉄道、犬の声、火が燃える音などが流れ、記憶と時空の中に存在する過去・現在・未来を想起させる。

展示は9月3日(火)まで、入場無料。

Chronos Cosmos: Deep Time, Open Space
■9月3日(火)まで
■開園時間:9am〜日没
■会場:Socrates Sculpture Park
 32-01 Vernon Boulevard,
 Long Island City
www.socratessculpturepark.org


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