2018年7月27日号 Vol.330

映画「おクジラさま」
捕鯨問題に新たな視点
上映資金をクラウドファンド中

映画「おクジラさま


佐々木芽生(めぐみ)監督によるドキュメンタリー映画「おクジラさま 二つの正義の物語」(英題「A Whale of A Tale」)が今年、ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコで劇場上映されるに当たり、現在その費用の一部をクラウドファンド中だ。
キックスターターでの目標額は6万5000ドル。8月17日(金)午後11時59分の締め切りまでにこの金額に達しない場合は、寄付額は返却される。
 アメリカでドキュメンタリー映画を一般劇場で公開することは難しい。宣伝・配給費用がかかり採算が見込めないためだ。佐々木監督はそれでも、映画をできるだけたくさんの人に見てもらうために、劇場公開に踏み切った。
 「劇場公開することで、アカデミー賞にもエントリー資格が得られます。より認知されることで、地方の劇場や映画サークル、市民上映会や大学での上映にも大きく広がって行きます」と、佐々木監督は話す。
 集まった寄付金は、3都市での上映の広報、草の根アウトリーチ、上映用DCP(デジタルシネマパッケージ)、予告編の制作、ポスターデザインや印刷物の制作などに充当される。

捕鯨論争に新たな光
 佐々木監督は、前作「ハーブ&ドロシー」で世界的に注目を集めた。第2作目となるこの作品「おクジラさま」は、製作に6年をかけ、半世紀以上続く「捕鯨論争」に新たな光を当てている。
 紀伊半島南端に近い和歌山県太地(たいじ)町。そこでの追い込み漁を糾弾した映画「ザ・コーヴ」がアカデミー賞を受賞して以来、この小さな漁師町は世界的論争に巻き込まれた。
 「くじらの町」として400年の歴史を持つ住民の誇りは、シーシェパードを中心とした世界中の活動家の非難の的となった。佐々木監督が初めて太地町を訪れたのは、捕鯨論争が激化した2010年のことだ。
 この映画は、マスメディアが報じてきた捕鯨をめぐる二項対立、すなわち「捕鯨を守りたい日本人と、捕鯨反対派外国人」という単純な視点ではない。佐々木監督のカメラは、賛否に縛られない多種多様な人々の意見をとらえていく。
 歴史・宗教・イデオロギー、自分と相容れない他者との共存は可能なのか? 映画は、世界が今直面している「ダイバーシティーの危機」を克服するためのヒントを提示しようとしている。

キックスターター募金リンク:
www.kickstarter.com/projects/1960505270

映画HP:okujirasama.com


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