2019年7月26日号 Vol.354

宇宙時代を予見
未来に着るモノを想像
「ピエール・カルダン:未来のファッション」


Installation view, Pierre Cardin: Future Fashion, Brooklyn Museum. (Photo: Jonathan Dorado, Brooklyn Museum)





ブルックリン美術館で7月20日(土)、フランスのファッションデザイナー、ピエール・カルダンの回顧展「未来のファッション」がオープンした。この日はアポロ11号の月面着陸50周年。宇宙時代を意識したデザインの「コスモコール」(Cosmocorps:フランス語で宇宙服の意)で知られ、男女の区別なく着ることができる「ユニセックス」を手掛けたパイオニアといわれるカルダン。本展では、70年に渡るキャリアから、1950年代から80年代のアイテムを中心に、170点以上を展示。洋服だけでなく、服飾品、靴、家具、工芸品、映像、個人的な写真など、カルダンのデザインやコンセプトを多方面から紹介する。

1960年代以前、高級服は個人向けに1点ずつ制作・販売するオーダーメイドの「オートクチュール」であった。
1959年、カルダンは、オートクチュールのデザイナーとして初めて、工場で一括生産できる既製服「プレタポルテ」を発表。以降、カルダンに加え、イヴ・サンローランや高田賢三が、初期の「プレタポルテ」を牽引。70年代以降は、「プレタポルテ」が流行を作っていった。

本展ハイライトは、前衛的なデザインが目を引く19 50年代の作品と、1964年の「コスモコール」コレクションだろう。
1960年代、アメリカとソ連が競い合っていた宇宙開発は、カルダンに大きな影響を与えた。宇宙服をイメージしたという「コスモコール」シリーズは、ビニールやアルミ泊、独自に開発した合成繊維、その名も「カルダイン(Cardine)」を使用、幾何学的でシンプルなデザインが特徴だ。

先見の明を持ち、人々が「未来に着るモノを想像してきた」というカルダンは現在、97歳。アーティスト・ステイトメントで、「2069年には私たち全員が、私の『コスモコール』を身につけ、月、または火星の上を歩いているでしょう!」と述べている。
ファッションを通してカルダンが思い描いた「まだ存在しない世界」、未来の風景が見えてくる。 展示は2020年1月5日(日)まで。

Pierre Cardin: Future Fashion
■7月20日(土)〜2020年1月5日(日)
■会場:Brooklyn Museum
 200 Eastern Parkway, Brooklyn
■大人$20、学生/シニア$12
 4〜12歳$8、3歳以下無料
www.brooklynmuseum.org


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