2019年7月26日号 Vol.354

チェーホフ作「三人姉妹」のミレニアル版
「モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ」


Photos by Joan Marcus



ロシア人作家アントン・チェーホフによる戯曲「三人姉妹」(初演1901年)のミレニアル版「モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ モスクワ(Moscow Moscow Moscow Moscow Moscow Moscow)」がオフブロードウェイで上演中だ。

オリジナルの物語は、ロシア革命直前の帝政末期のロシアが舞台。田舎町に赴任した軍人一家の三姉妹が主人公だ。独身教師の長女オルガ、結婚生活に不満を持つ次女マーシャ、そして末っ子のイリーナ。ロシアの知識階級の閉塞感を描いている。高級軍人一家としてモスクワで華やかに暮らしていたが、父親の死後生活が苦しくなる。身につけた教養も、引っ越した先の田舎町では無用の長物。モスクワへ帰ることだけを夢見て暮らしていた。

このミレニアル版は、人気脚本家ハリー・ファイファーと、演出家トリップ・カルマンのコンビによる作品。元宝塚のAkoが、三姉妹の乳母アンフィーサ役で出演している。
【よみタイム・ルポ】
Fワード連発!イマドキのチェーホフ


チェーホフの「三人姉妹」の現代版かぁ・・・と、「勉強」のようなつもりで出かけてみたら、これが思っていたより(失礼!)面白い。一世紀前のロシアの知識階級の倦怠や絶望が、ミレニアル世代ならではの「短縮語」や「Fワード」満載のセリフで展開するという意外性に、客席は爆笑の連続です。「BFD」(Big Fucking Deal 「どうでもいいじゃん」)、「Obvi」(Obviously 「トーゼン」)など、正直なところを白状すると、中年の日本人である私は帰宅後にググる必要がありました(笑)。

俳優陣はトップクラスで、三姉妹の一人は男優が演じ、小人症の俳優も出演するなど「ノントラディショナル」キャスティングである点も注目。Akoさんが演じた乳母役は、物語が進むにつれ、歩行器や車椅子を使い、キャラクターの「老い」を強調していた点に現代性を感じました。ちなみに、タイトルで「モスクワ」を6回も並べた理由を、劇作家は「5回より6回の方が『うざい』から」だと・・・同感です。

昨年オープンしたばかりのMCC Theaterには劇場が2つあり、本作は100席の小さい方で上演されるため、どの席で観ても遜色なし。英語の難易度はそこそこ高く、登場人物も多いので、予め「三人姉妹」のあらすじを読んでおくことをおススメします。

公演期間は8月17日までに延長。上演時間は休憩なしの95分。(編集部:YT)

Moscow Moscow Moscow Moscow Moscow Moscow
6月26日(水)~8月17日(土)
MCC Theater:511 W. 52nd St.
$49〜
mcctheater.org


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