(左)紫麻絽地矢羽根模様帷子(大正)Promised Gift of John C. Weber (右)Paul Poiret, Arrow of Gold Dress, 1925. The Metropolitan Museum of Art, Gift of Mrs. Robert A. Lovett, 1951
こうしたパターンには、北斎の大波図を簡素化した「白絹レノ地水玉模様」や、赤地に黒と白抜きの直線が交差する「赤地落雷模様」などがあり、元絵の由来は必ずしも西洋ばかりではないようだ。だが、折り鶴を平面的に描いたキュビスム風の図案は、まるで現代のグラフィティ。さらに赤青黄の色面が並ぶ「変り大格子模様銘仙着物」など、まさにピエト・モンドリアンの抽象画を思わせる。
Thom Browne, Ensemble, 2016. The Metropolitan Museum of Art, Gift of Thom Browne, in honor of Harold Koda, 2016
一方、日本の図柄を取り入れたドレスの例では、その名も「金の矢羽根」と題されたポール・ポワレのフラッパードレスがある。濃い紫の矢絣とともにペアで展示され、こうした刺激的な東西の対話が会場のあちこちで展開する。また、ポワレの一枚布によるオペラコートや、マドレーヌ・ヴィオネのバイアスカットによるドレスは、ストンとした直線断ちの着物スタイルをいち早く取り入れた例だろう。