2023年07月07日号 Vol.449

太った身体がキャンバス
「自撮り」の革命
「リウ・スシラヤ:死んだ魚と呼ばれるスタイル」

Iiu Susiraja. Lucia. 2010. Courtesy the artist, Makasiini Contemporary, and Nino Mier Gallery.

フィンランドを拠点に活動するアーティスト、リウ・スシラヤ(Iiu Susiraja)の個展「死んだ魚と呼ばれるスタイル(Iiu Susiraja: A style called a dead fish)」=表紙写真=が、9月4日(月)まで、ロングアイランド・シティのMoMA PS1で開催中。50枚以上の写真とビデオで構成されたアメリカ初となる美術館展だ。



1975年生まれ、フィンランド第三の都市「トゥルク」在住のスシラヤは、自らをモデルにしたセルフポートレートで知られている。男女問わず「太っていること」は、「嘲笑」の対象になることも多いが、彼女は自らの体型を恥じていない。逆に、その「肉体的にコミカル」な要素を武器に、作品を生み出している。

Iiu Susiraja. Happy meal. 2011. Courtesy the artist, Makasiini Contemporary, and Nino Mier Gallery.

撮影場所は、ほとんどが彼女の自宅や実家。台所、居間、ベッドルームといった日常的な空間で、テーブルクロス、傘、ホットドック、バナナ、ゴム製のアヒルなど、どこにでもある日用品を小道具として使用。計算した構図に自ら入り込み、無表情でカメラを見つめるスシラヤ。そのイメージは「セルフポートレート」というより「静物画」のようだ。

デジタル・マガジン「ザ・アイ・オブ・フォトグラフィー」でスシラヤは、「自分の写真を撮るのは、私が一番よく知っている被写体だから。作品は私の『感情の記録』。私生活が作品のテーマとなる、すばらしい瞬間です」と答えている。

自然体でコミカル。自らの存在そのものを「キャンバス」に、シニカルなユーモアを追求するスシラヤは、現代の「自撮り」に革命を起こす。

Iiu Susiraja: A style called a dead fish
■9月4日(月)まで
■会場:MoMA PS1
 22-25 Jackson Avenue
 Long Island City, Queens
■大人$10、学生/シニア$5、16歳以下無料
www.momaps1.org


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