2021年6月11日号 Vol.399

劇的世界を疑似体験
異色のVR公演
タニノクロウ「ダークマスター」

The Dark Master © Japan Society

ジャパン・ソサエティー(JS)が6月23日(水)から27日(日)まで、タニノクロウ率いる庭劇団ペニノの舞台作品「ダークマスター」のVR(バーチャル・リアリティー)公演を行う。行政のコロナ対策ガイドラインを踏まえ、JS館内で開催される。観客は一人一人、個別のブースの中に座り、VRゴーグルとヘッドホンを装着。主人公の視点を共有しながら、劇的世界を疑似体験する。VR映像以外にも、他の観客とともにライブの演劇体験が味わえる、様々な仕掛けが施されている。ネット映像によるリモートワークが一気に普及したソーシャルディスタンス時代にふさわしい、興味深い作品と言える。

英語公演、各公演の定員は10人。作品の一部に未成年者に不適当な場面があるため、18歳未満は入場不可。



ある食堂にふらりと訪れた「あなた」は、店のマスターから「月給50万円でこの食堂をやってくれないか」と強引に頼まれる。調理経験がないという「あなた」に、店内に取り付けられた小型カメラとイヤホンを使って指示を出すから大丈夫だと説得するマスター。イヤホンからの指示に従って調理をし、マスターに操られるままに店を切り盛りする。

最初の出会い以降、マスターはイヤホンから指示を出すだけで「あなた」の前に姿を現さない。マスターの声でリモートコントロールされる「あなた」。次第にその人格と肉体に変化が起こり始める。

The Dark Master © Keizo Maeda

タニノは、元精神科医という異色の劇作家・演出家。「ダークマスター」は、他者による自己の支配、他者が自己の中で同化していく様を描いた、実験的作品だ。狩撫麻礼原作の同名短編漫画を、タニノが脚色・演出し、2003年に初演。以来、日本各地、フランス、オーストラリアなどで上演されてきた。

今回も、当初は生の役者が出演する舞台作品として予定されていたが、コロナ禍の影響でオリジナルの形での公演が困難となった。そこで、JS芸術監督と共にVRバージョンでの公演の可能性を模索。昨年10月の東京芸術劇場でのVR上演を経て、今回のニューヨークJS公演となった。

■6月23日(水)6:30pm/8:30pm
■6月24日(木)5:00pm/7:00pm/9:30pm
■6月25(金)・26日(土)2:30pm/4:30pm/7:00pm/9:00pm
■6月27日(日)12:30pm/2:30pm/5:00pm
※時間厳守、開演後の入場不可
■会場:Japan Society
333 E. 47th St.(bet. 1st & 2nd Aves.)
■一般$25、JS会員$20
■ボックスオフィス:TEL: 212-715-1258
www.japansociety.org


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