2022年6月10日号 Vol.423

MoMAで松竹映画26作上映
日本映画の新しい発見と理解
「小津を超えて:松竹スタジオの隠された宝石」

①Demon Pond「夜叉ヶ池」

近代美術館(MoMA)で6月10日(金)から7月9日(土)まで、「小津を超えて:松竹スタジオの隠された宝石(Beyond Ozu: Hidden Gems of Shochiku Studios)」と題された上映会が開催される。

1920年11月、「帝国活動写真株式会社」として設立した「松竹株式会社」。世界的に有名な小津安二郎監督の「東京物語」を生んだ松竹スタジオの中から「レア」な26作品を選出。日本映画に対する新しい発見と、理解を深める。

ここでは、編集部が独断で選んだ「観ておきたい」作品数本を紹介しよう。

オープニングは篠田正浩監督の「夜叉ヶ池」=写真①=。泉鏡花の同名戯曲を映画化したもので、ヒロイン・百合と夜叉ヶ池の主・白雪姫の二役を女形の坂東玉三郎が演じ、話題となった。上映は4Kデジタルリマスター版、北米初公開。



太田経子の原作を権藤利英が脚本を手がけ、中村登が監督した「夜の片鱗」=写真②=。下請け工場に勤めながら、夜はバーでホステスとして働く19歳の芳江。男に騙され転落していく芳江 の前に、また別の男が現れ…。美しい映像と音楽が郷愁を誘う昭和映画。

②The Shape of Night「夜の片鱗」

「桃太郎 海の神兵」=写真③=は、戦時下の1945年4月12日に公開された日本初の長編アニメ映画。日本・海軍省から国策動画映画製作の命を受け、松竹動画研究所が制作。当時、日本政府の大義だった「八紘一宇」と「アジア解放」を主題にした大作で、桃太郎率いる動物たちを日本軍に、鬼ヶ島の鬼たちを敵国軍として描いている。

③Momotaro, Sacred Sailors「桃太郎 海の神兵」

加藤泰監督の遺作となった「ざ・鬼太鼓座」=写真④=は、新潟・佐渡ヶ島の芸能集団「鬼太鼓座」の若者たちを追った異色の音楽ドキュメンタリー。座員たちは、雪が降り積る町海岸で体を鍛え、和楽器演奏に没頭。力強い演奏と、彼らの肉体美、魂が描かれる。加藤監督生誕100年の2016年、デジタルリマスターされた。

④The Ondekoza「ざ・鬼太鼓座」

「死の棘」=写真⑤=は、作家・島尾敏雄の代表作を小栗康平監督が映画化。結婚して10年、2人の子どもに恵まれ、穏やかに暮らしていたトシオ(岸部一徳)とミホ(松坂慶子)だったが、トシオの浮気が発覚。精神を病みトシオを責め続けるミホと、謝罪を繰り返すトシ

⑤Sting of Death「死の棘」

吉村昭の同名小説を映画化した相米慎二監督の「魚影の群れ」=写真⑥=。青森県の漁港を舞台に、マグロの一本釣りに命をかける男たちと、寡黙でありながらも情熱を秘めた女たちの物語。

全上映作品リストおよび最新情報はオフィシャルサイトで確認を。

⑥The Catch「魚影の群れ」

Beyond Ozu:Hidden Gems of Shochiku Studios
■6月10日(金)〜7月9日(土)
■会場:MoMA、 Floor T2/T1
 11 W. 53rd St.
■映画鑑賞のみ:大人$12、シニア$10
学生$8、16歳以下無料
www.moma.org
 
★抜粋作品「カッコ内は邦題」
■Demon Pond「夜叉ヶ池」
 6月10日(金)6:30 pm
■The Shape of Night「夜の片鱗」
 6月17日(金)6:30 pm
■Momotaro, Sacred Sailors
 「桃太郎 海の神兵」(1945)
 6月24日(金)4:00 pm
■The Ondekoza「ざ・鬼太鼓座」
 6月28日(火)4:00 pm
■The Sting of Death「死の棘」
 6月29日(水)6:30 pm
■The Catch「魚影の群れ」
 7月6日(水)4:00 pm
※上映日程は6月1日時点の情報で追加上映有り。最新情報はMoMAウェブサイトで


HOME