2022年5月27日号 Vol.422

全米最大規模を誇る
NYCのパブリックアート
動物保護やLGBTQ+など3選

①Gillie and Marc, Faces of the Wild, 2022. Photo by KC of Yomitime

NY市が初めてパブリック・アートを展開したのは1967年。「環境における彫刻(Sculpture in Environment)」と題したグループ展がセントラルパークで行われた。

以来、ニューヨーク市は公共スペースを「博物館」と位置付け、「アート作品を街全体で暖め、日常の一部にする」ことを掲げて継続。同市でパブリックアートに取り組む機関のひとつ「ニューヨーク市運輸局(NYC DOT)」は、これまでに350以上の期間限定アートをプログラム。「ニューヨーク市公園局(NYC Parks)」は、市内に800を超えるモニュメントが設置されているとし、「ニューヨーク市は全米でも最大の公共野外美術館を構成している」と誇らしげだ。

次々と新たなブリック・アートが登場する中、今回は4月から今日までにお目見えした3ヵ所を紹介したい。



「野生の顔」@グリニッジビレッジ

NY市ではお馴染みとなったオーストラリアの夫婦アーティスト、ジリーとマーク・シャトナーによる「野生の顔(Faces of the Wild)」=写真①=が4月1日から、グリニッジビレッジに出現。絶滅危惧種の動物像を都市に置くことで、人々に「自然との繋がり」を思い起こさせ、保護への行動を促す「ラブ・ザ・ラスト(Love The Last)」プロジェクトの一作だ。

今回、登場したのはキタシロサイ、チンパンジー、アダックス、ニシゴリラ、ホッキョクグマ、アメリカアカオオカミ、マルミミゾウ、カバ、ライオンの9体。絶滅に瀕した彼らの「目」を深く覗けるようにと、頭部のみを台座に設置。解説プレートには、各動物の詳細や寄付情報を提供するQRコードが記されている。

②Paola Pivi, You know who I am, 2022. Photo by KC of Yomitime

「あなたは私が誰だか知っています」@ハイライン

自由の女神像に、カトゥーンのお面をかぶせた「あなたは私が誰だか知っています(You know who I am )」=写真②=は、イタリア生まれのマルチメディア・アーティストのパオラ・ピヴィの作品。「絵文字」にヒントを得たというお面は全6種類で、2ヵ月毎に交換される。ピヴィの体験を元に家族や知り合いの顔を描写した異なる「人物」が登場し、「自由への物語」を綴る。ちなみに現在のお面(写真②)は、ピヴィの息子がモデルだそうだ。

人々が、「当たり前」だと考えているモノや事柄に新たな視点を加えることで、これまでの「常識」に変化をもたらそうと試みる。

③Leilah Babirye, Agali Awamu (Togetherness), 2022. Photo: Nicholas Knight, Courtesy of Public Art Fund

「ブラック・アトランティック」@ブルックリン・ブリッジ・パーク

ブルックリン・ブリッジ・パークを会場に5人の作品を展示した「ブラック・アトランティック」。アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパを航海で繋いだディアスポラ(移民や植民または民族離散を意味)に触発された作品群だ。

ブルックリンで活動するウガンダ生まれのレイラ・バビリアが手がけた「アガリ・アワム(Agali Awamu)」=写真③=は、「一体感(Togetherness)」を表現。伝統的なアフリカのモチーフを取り入れた像で、「LGBTQ+のコミュニティを歓迎する自由の灯台として、誇りを持って立つ」ことを目的に制作された。
全作品は、オフィシャルサイトで。

Faces of the Wild
■7月31日(日)まで
■会場:Ruth Wittenberg Triangle
 421 6th Ave.
https://lovethelast.com

You know who I am
■2023年3月まで
■会場:High Line
 at 16th St.
www.thehighline.org

Black Atlantic
■11月27日(日)まで
■会場:Brooklyn Bridge Park
 334 Furman St, Brooklyn
www.publicartfund.org


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