2020年5月22日号 Vol.374

新型コロナウイルスと対策(1)

日本クラブ/ニューヨーク日本商工会議所(JCCI)と米国日本人医師会の共催で、5月11日、COVID-19の医療ウェビナー第2弾が開催された。今回は、医師会から中釜知則医師(内科)と金原聡子医師(内科・小児科)が出席。日本クラブ/JCCIの前田正明氏の司会で進められた。ここでは内容を抜粋して紹介する。ウェビナーの様子はユーチューブ(下記)で公開されている。

日本クラブ/ニューヨーク日本商工会議所/米国日本人医師会共催ウェビナー第2弾
「NYの医師がお答えする COVID-19のギモンQ&A」
YouTube ■ https://youtu.be/RQ5iTslGnCQ
中釜知則 医師(内科)
ジャパニーズ・メディカルケア院長
マンハッタン:Tel 212-365-5066
ウェストチェスター: Tel 914-305-8630
www.jmedical.com

知識と意識の向上で
賢い市民・患者に


中釜先生のこの日のテーマは、「COVID-19の収束に向けて、予防と対策規制の解除はどのようにして行われるのか、知事や専門家は何を見ているのか、そして私たちは何をしていくのか」だった。
「自分たちが予防のために行っていることについて、なぜそうするのか、何の役に立っているのかを知りましょう。その上で、行政や専門家が発表するデータや数値を見ながら、リテラシーを上げることで、予防に対するモチベーションを上げてほしいと思います。そうすることが、ひいてはパンデミックの収束につながっていきます」と中釜先生は話した。

予防とは
実は3段階


ウェビナーでは、まず予防とは何か、感染と蔓延の法則、自宅待機命令の根拠などについて解説した。
「病気にならないようにすること=予防」というイメージがあるが、先生によると、実際には予防には一次、二次、三次とある。一次予防とは病気が存在しない段階でできることで、禁煙や運動も含まれ、COVID-19では手洗い・マスク・消毒がこれに該当する。「予防接種も一次予防ですが、残念ながらCOVID-19のワクチンができるまであと1年はかかると言われています」と中釜先生。
二次予防が病気の治療で、三次予防は病気から回復した後の抗体検査やリハビリ、フォローアップ検診など。そしてこの一連の予防には、行政による自宅待機命令や経済支援なども含まれる。「つまり、予防というのは実は病気のプロセスの全てを含み、どこかで滞るとうまく解決にたどり着けないことになります」と中釜先生は説明した。
また、感染と蔓延の法則では、「基礎再生産数」というキーワードについて触れた。人間同士の接触による感染の広がりを示す数値で、これが「高い=再生産数が上がる=感染が広がる」という構図になる。自宅待機とソーシャルディスタンシングは、この数値を下げて感染を止めるためだと解説した。



行政規制解除
7項目


そして、今やっと行政規制の解除に向けて動き出した中で、ではニューヨーク州は今後どういうプロセスで経済を再開していくのかという疑問について、クオモ知事の記者会見からの情報と、州のホームページの資料(図①)を基に解説した。


図① https://forward.ny.gov
これら7項目について全てがクリアした地域から経済を再開する(上記は5月16日の状況)

▼州は規制解除の判断基準7項目を設け、全てをクリアした地域から経済を徐々に再開する。
▼7項目とは、14日間連続で入院患者・死亡者が減っていることや、ICUの床数の空きが30%以上あること、新規感染者数が一定以下であることなど。
▼経済再開後も患者数の増減を見ながら、行政規制を随時強化したり、さらに解除したりと、フレキシブルに対応する。
州内でも、フィンガーレーク地域他、すでに解除対象になっている地域もある。ウェビナーが開かれた5月11日の段階ではニューヨーク市は7項目のうち、まだ3項目がクリアできていないため、解除にはもうしばらくかかりそうということだった。

遠隔医療についても、今可能なことと、今後の課題について述べ、最後に2018年のジョンズ・ホプキンス大学の提言を受け、「パンデミックは今後頻度を上げて起こる」ため、「今回の経験で得た知識を最大限に活用し、将来の感染症対策につなげる必要がある」とまとめた。


前田正明
日本クラブ事務局長代行
ニューヨーク日本商工会議所(JCCI)専務理事代行


前回のWebinarに続き、多くのご参加を頂きありがたいと思っております。講演の最後まで退出される方もおらず、皆さんの関心の高さがうかがわれました。これからも皆様のご要望にお応えし、生活に密着したWebinarを開催していく予定ですのでご期待ください。
www.nipponclub.org



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