2018年5月11日号 Vol.325

過去から探る未来への可能性
「アンゼルム・キーファー:ウラエウス」




All photos by KC of YOMITIME


野外アートを手掛ける「パブリック・アート・ファンド」主催の展示「ウラエウス(Uraeus)」が、ロックフェラーセンターに出現。高さ20フィート(約6メートル)のポール上部には開いた本があり、そこから鷲の翼(30フィート:約9メートル)が左右に広がる。ポールには蛇が巻きつき、足下には本が散らばる。

作者は1945年、ドイツ生まれのアンゼルム・キーファー。歴史、文化、宗教、神話を兼ね合わせた記念碑的な絵画やインスタレーションで知られる。大学時代に法律を学び、後に美術へ転向。70年代にはヨーゼフ・ボイス(ドイツの現代美術家で社会活動家)と共に学んだ。2008年から、パリ(フランス)と、アルカセル・ド・サル(ポルトガル)を拠点に活動を続けている。

「ウラエウス」とはコブラをかたどった記章で、古代エジプトで王の権利や神性を象徴するもの(ツタンカーメン王などのマスクの額にもある)。またヘビは、幸運の象徴であると同時に人々に恐怖心を起こさせる。人類の罪、真実、正義、罰、償い…足下に散乱する本は捨てられたのか、それとも天に昇るのを待っているのか。大きく広がる翼は、世界へ飛び立とうとするパワーを連想させる一方、巨大で無機質なビルがそれを阻んでいるようにも感じる。「暗い過去に直面する力」と、「未来への可能性」に迫った、「キーファーの哲学」を象徴するようだ。

Anselm Kiefer: Uraeus
■7月22日(日)まで
■会場:The Channel Gardens
 @Rockefeller Center
 5th Ave. (bet.50th & 51st St.)
■無料
www.publicartfund.org



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