2020年5月8日号 Vol.373

広がるネット配信
教材、演劇支援も
舞台関連から注目4選


「空騒ぎ」オール黒人キャストで、人種・性差別にも意識を傾けた Photo by Joan Marcus


「ライオンキング・エクスペリエンス」舞台映像もふんだんに 取り入れられ、楽しみながら学べるPhoto by Joan Marcus


「観劇三昧」より「アンティゴネ」 岩の上に立つのはアンティゴネ役の美加理 Photo by Stephanie Berger


「レイト・レイト・ショー」信号が赤になったら慌てて歩道へ!


ニューヨーク州の外出規制発令から7週間。クオモ知事の会見の焦点も経済活動の再開へと移行、長いトンネルの先に小さな光が見えるようになって来た。
続く自宅待機でネットに娯楽を求めている人も多いことだろう。4月末にはメトロポリタン・オペラがガラ公演を配信し、世界中から40名以上の歌手が参加した。ブロードウェイでも、作曲家スティーブン・ソンドハイムの90歳を祝ってスターが結集したコンサートが配信された。
前者は一部を除いてライブであったにもかかわらずスムーズに進行し、舞台公演と同様に、表に出ない裏方スタッフの存在を感じて胸が熱くなった。ブロードウェイの方は技術トラブルで一時間遅れて始まったが、「オープニングナイトの開演は遅れるものだ」と茶目っ気あるツイートに笑ってしまった。
公演中止による苦肉の策にせよ、ネット配信というツールはコロナ後もいろいろな可能性を残してくれそうだ。
今回も舞台関連の注目の動画を紹介したい。

▼シェイクスピア・イン・ザ・パーク
「空騒ぎ」

夏の風物詩のセントラルパークの野外公演も中止になり、昨年上演された「空騒ぎ」を配信中。シェイクスピアと言っても設定は現代で、まるでシットコムを見ているような丁々発止のやり取りが小気味良い。歌や踊りの入る音楽劇スタイルなのも楽しい。少しずつ暗くなって行く野外劇場の独特の雰囲気も味わえる。5月27日まで。

▼ライオン・キング・エクスペリエンス
大ヒットミュージカル「ライオン・キング」からミュージカルの作り方や成り立ちを学べるインタラクティブな教材。8〜11歳、12〜15歳向けの2コースがあり、物語、音楽、技術、稽古のプロセス、アンサンブルの役割などテーマごとのセッションに分かれ、各10分程度の動画にアクティビティやディスカッション、作文のトピック等のテキストが付く。もともと学校公演の上演権許諾に付随した教材だったが、全米で休校状態が続いていることから、社会的距離を保ちながら家庭でも学べる形に改訂され、ネット上で無料の視聴やテキストのダウンロードが可能となった。アメリカの演劇教育の懐の深さに感動すること請け合いで、大人にもオススメ。

▼観劇三昧
日本全国の小劇場の舞台を紹介し、ユーザーに演劇を身近に感じてもらいつつ劇団を支援するサイト。月額950円(税別)で400以上の劇団の1400本余りの作品の視聴が可能で、ユーザーの再生時間に応じて劇団側にロイヤルティが支払われる。新型コロナウイルス感染症の拡大で中止、延期になった公演を特集したページもある。無料のプランでも130本以上を提供、有料の作品も冒頭3分間はお試しで見られるため、気軽にトライできる。
昨年秋にパークアベニュー・アーモリーで上演され、ニューヨークタイムズに絶賛された静岡県舞台芸術センターの「アンティゴネ〜時を超える送り火〜」も有料作品の一つ。平田オリザ率いる青年団、八嶋智人所属のカムカムミニキーナ、ダイナミックな空間使いで知られる維新派、温泉ドラゴン、柿食う客、劇団鹿殺し、五反田団はぜひチェックしたい。

もう1本、コメディアンのジェームズ・コーデンのトーク番組からとっておきの動画を。スター歌手と車の中で熱唱する「カープール・カラオケ」も面白いが、横断歩道で突然ミュージカルを始めるシリーズも爆笑。この回では、ヒュー・ジャックマンら「グレイテスト・ショーマン」のキャストとコーデンが「オン・ザ・タウン」などニューヨークを舞台としたミュージカルのメドレーを歌って踊る。2017年に53丁目とブロードウェイの角で撮影された。車も人もひっきりなしに通る活気に満ちたニューヨークの街がまぶしい。(高橋友紀子)

シェイクスピア・イン・ザ・パーク「空騒ぎ」
■5月27日(水)まで
https://to.pbs.org/3f3cCSD
※掲載URLは短縮サービス「Bitly」使用(編集部)


ライオン・キング・エクスペリエンス
www.lionkingexperience.com


観劇三昧
v2.kan-geki.com


レイト・レイト・ショー with ジェームズ・コーデン
https://youtu.be/TZSVf-yD7N8


HOME