2022年4月29日号 Vol.420

ミニマリズム運動に風穴
活動の集大成を検証
「宮本和子: 挑む線」

Kazuko Miyamoto with string constructions. Courtesy of the artist and Zürcher Gallery, New York/Paris

ジャパン・ソサエティー(JS)ギャラリーが4月29日(金)から7月10日(日)まで、展示会「宮本和子:挑む線」を開催する。宮本が美術機関で行う初の個展となる。

宮本は、1960年代男性中心に発展を遂げていたミニマリズム運動に風穴を開けたアーティスト。本展は、60年代から2000年代にかけての宮本の活動の集大成。60年代後半の絵画やドローイング、70年代の空間的構造体作品、87年から2000年代にかけてのパフォーマンスによる概念的実験や、「kimono」シリーズを展示する。これら作品の多くは初公開。才能あふれるアーティストのキャリアを検証するまたとない機会となる。



今回展示される初期作品の数点は、60年代後半から70年代初頭にかけてのキャンバスや紙を使用した作品だ。スプレー塗料などの素材を用いることで、当時主流だったミニマリズムの作品にはない、有機的で不正確な要素を作品に取り入れている。

本展会場デザインは、ニューヨークを拠点とするデザイン事務所、ランスマイヤー社創設者レオン・ランスマイヤーが担当。実際の宮本の制作スタジオ空間を想起させるように制作した。ギャラリーの打放しコンクリート床を露出させ、硬材のプラットフォームを挿入、そこに糸を使った宮本の作品を直接固定することで、宮本自身の身体と制作物の間の物理的なつながりを表現する。

Kazuko Miyamoto, Vincent Corner, 1978. © Kazuko Miyamoto. Courtesy of the artist and Zürcher Gallery, New York/Paris

宮本は東京に生まれ、20代前半だった64年頃からマンハッタンのローワーイーストサイドを拠点に制作を続けてきた。68年、隣人のアーティスト、ソル・ルウィットと出会い、アシスタントとして立方体の制作に携わり、71年のグッゲンハイム美術館での展示など、多くのウォール・ドローイングを手がけた。その傍らでミニマリズムの表現手段を研究し、独自の表現方法を見いだし始める。

宮本はまた、自身のキャリアを通し、ニューヨークでアートを制作する女性であること、そして移民であることの意味を様々に探求。スタジオでの制作活動だけでなく、コミュニティーにおけるコネクター、キュレーター、ギャラリスト、さらに過小評価されたアーティストの支援者等、多くの重要な役割を担っっていた。

Kazuko Miyamoto, Paper Kimono, 1990. © Kazuko Miyamoto. Courtesy of the artist and Zürcher Gallery, New York/Paris

1972年、ソーホーで開催された「13人の女性アーティスト」展に参加。同年末にはウォースター通り97番地にオープンしたニューヨーク初の女性アーティスト集団、A.I.R.ギャラリーを開く。初期メンバーとして宮本は5つの個展を開催し、2つのグループ展のキュレーションを担当した。

ダウンタウンの前衛アートで重要な存在となった宮本は86年、ローワーイーストサイドに自身のギャラリー「onetwentyeight」をオープン。コミュニティー形成に力を注ぎ、移民や若い新進アーティストを紹介。ジャン=ミシェル・バスキア、デヴィッド・ハモンズ、ナンシー・スペロ、ピョートル・ウクランスキーなどを最初に展示。今では、ローワーイーストサイドの最長寿ギャラリーとなっている。

Kazuko Miyamoto: To perform a line
■4月29日(金)~7月10日(日)
■会場:Japan Society gallery
 333 E. 47th St. (bet. 1st & 2nd Aves.)
※JS会員限定開館時間:木・金12:00~2:00pm
■一般$12、シニア/学生$10、JS会員/16歳以下無料
■ボックスオフィス:TEL: 212-715-1258   
www.japansociety.org


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