2020年4月17日号 Vol.372

コロナ危機を生きる
情報共有・相互支援の場に
FBグループ「ニューヨーク情報共有」

コロナ危機を生きる在ニューヨーク日本人の、情報共有と相互支援の場になっているフェイスブック(FB)グループがある。コロナ危機が急展開を見せた3月16日、ブルックリン在住のフリーランスジャーナリスト、田中真太郎さんが立ち上げた「ニューヨーク情報共有」。立ち上げから20日後にはメンバーが2000人以上に膨らみ、様々な生活情報がシェアされている。

■ニューヨーク情報共有
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FBカバー写真・植山慎太郎


「『ものがない』から始まったグループなんです」と田中真太郎さん(グループ管理人)=写真=は言う。今にも自宅待機命令が出そうな状況で、食料品を買っておこうと田中さんが近所のスーパーに行くと、パンやパスタ、いろいろなものが売り切れていた。

「最初、個人のFBアカウントで、近所のスーパーの状況を写真と一緒に投稿したら、ニューヨーク市内の別のエリアに住む友人たちがそれぞれの場所の状況や傾向など、いろんな情報を寄せてくれました。こういう情報ならば、他の人にもシェアしたほうがいいなと思ったのがグループを始めたきっかけです」

「ニューヨーク情報共有」という、これ以上ない素朴な名称については、「いやー、深く考えなかったんで」と田中さん。「ニューヨーク=マンハッタンというイメージで多くの報道がされますが、住んでいればそうでないことはみんな知っています。だから、それぞれのエリアで、それぞれが自分の目で見た情報は近くに住んでいる人には役立つ。そういう視点を持って、ニューヨークに住んでいる人にとって役に立つ情報やニュースがシェアされる場になればいいと思った」という。誰でも情報をシェアできるようにしたかったため、最初は最小限の条件の自動承認制にした。
日々刻々と変わる情勢の中、必要となる情報も変わってくる。一人歩きしがちなこうしたグループのゲートキーパーとして、流動的な状況を把握した上で投稿内容をチェックしたり、コメント欄で内容をフォローしたりと、大変な作業だ。
「僕自身もコロナの影響で先の収入の見込みがほぼ絶たれたんですが、だからといって、どうにもできないし、もう潔いぐらいに何も考えずに、目の前にあるできることをやっているだけです」と笑う田中さんだ。
メディアの編集者としての20年以上の経験があるとはいえ、メンバーが増えるにしたがって一人で運営作業をこなすのは難しくなった。考えを理解してくれる友人や直接会ったことがないメンバーでも「この人は信頼できる」と思えた人に声をかけ、チームを作り、現在は田中さん含め5人で運営している。もちろん全員ボランティア。

失業保険情報から
食材の配達情報まで


投稿内容は実に様々。失業保険を申請するための情報から、レストランのデリバリー状況、スーパーの品揃え情報、総領事館のお知らせなど、まさに、「そのときに役立つ情報」が、みっしり詰まっている。

「**のトレーダージョーズに行ったら入店まで2時間待ちだった」といった買い物情報や、「トイレットペーパーはデュエンリードなどより、意外に普通のスーパーやデリで買えるよ」などの何気ない投稿からは、今の非常事態が浮き彫りになっている。

市内の病院で看護師として働く日本人女性が直接連絡をしてきて、その声を田中さんがまとめて生々しい現場の声も届けた。コロナの影響で一般診療が受けられず、体調不良の妻を抱え、困り果てた人の投稿には、励ましや、親身になってアドバイスをするメンバーからのコメントが数多く寄せられた。

成田や羽田、JFKでの入国審査の状況も、実際に日米間をここ数日で行き来した人が、生の情報を提供している。
運営チームの一人、本田真穂さんが、「こんな時だからこそ、自宅で学ぼう」と、ハーバード大など全米の有名大学が無料で提供しているオンラインコースのリストを紹介していた。自宅待機命令が出て3週間が経とうする今、自宅での過ごし方は、役立つ情報として、次に運営チームがとりあげようとしているテーマの一つだそうだ。

田中さんは、「みんなで生の情報、正確な情報をシェアするという、本来の目的を見失わないように、運営チーム、メンバーと一緒にグループを続けていきます」と話している。

運営チーム・メンバー紹介

本田真穂さん(モデレーター)
●日々投稿に対応したりする中で:先の見えない不安や、外に出られないストレスが、だんだんと積み重なって表に出てきていると感じます。多様すぎる、過激すぎる、推測範囲が広すぎる情報は混乱を招くので、気をつけなければいけないな、と感じます。
●印象に残っている投稿:急な日本帰国を強いられ、疲れているにもかかわらず、帰国の手続きや空港の様子を詳細に報告、共有してくださった方が何人もいました。後に続く方々への思いやりに感銘を受けました。手作りマスクの How To ビデオもとても役に立ちました。

タナカ有美さん(モデレーター)
●日々投稿に対応したりする中で:ニューヨークに住む仲間として、日本人コミュニティーの助け合おうという精神を強く感じます。東日本大震災後もそうでしたが、今回もコミュニティーが形成されて来ているように感じます。
●印象に残っている投稿:コロナウイルスが終結したら何をしたいかと問いかけ、コメントを募ったところ、『ハグしたい』『みんなでご飯に行きたい、飲みたい』と言った声が多く、たとえバーチャルで繋がっていても、人との触れ合いが人生において大事なものだと実感しました。

Jun Suenagaさん(オブザーバー)
日々投稿に対応したりする中で:メンバーも投稿数も増える中で、ニューヨーク市内の日本人コミュニティーに役立つ情報を重視しています。そして情報の信憑性にも留意しています。今の状況下では、それが人の生活や命まで左右する場合があるので。
●印象に残っている投稿:奥さんが体調を崩し、病院情報を知りたいという投稿がありました。多くのメンバーが親身になってコメント欄でアドバイスをしていたことに感銘を受けました。その後の経緯も投稿主がグループに報告してくれて、安心できました。

原田隆志さん(オブザーバー)
日々投稿に対応したりする中で:可能な限り各投稿の内容を見て、その方の状況や気持ちや、求めていることを考えながらコメントを返すようにしています。個人的な投稿・質問でも、さらに情報を引き出せるようなコメントを心がけています
印象に残っている投稿:洗濯に関しての投稿ですかね。皆さんいろいろ工夫して状況に対応されているのにびっくり。思わず洗濯の化学を調べることになりました。あと、NakamuraNYCさんが提供されている次亜塩素酸水を頂きました。大変ありがたいです!


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