2021年4月16日号 Vol.395

アジア人差別に「共存」訴え
尊重しあえる未来を
Dragon76「ストップ・アジアン・ヘイト」

3月29日、制作中のDragon76。壁画は1日で描いた。Photo by Ben L@just_a_spectator

ニューヨークを拠点に活動する日本人ミューラル・アーティストのDragon76(ドラゴン76)による壁画「ストップ・アジアン・ヘイト(STOP ASIAN HATE)」=表紙写真=が3月29日(月)、ローワーイーストに出現した。写真家のベン・L氏が「地域をドレスアップさせる」ことを目的に行う壁画プロジェクト「イーストビレッジウォール(@eastvillagewalls)」の一環だ。



多くの企業や団体からの依頼で、世界各地に壁画を描くDragon76。マンハッタンのリバティーパーク横のビル壁面の2点と、3WTC48階と79階のミューラルは、ワールドトレードセンターからオファーされ、手掛けたもの。ニューヨーク発祥のライブペインティング大会「アートバトル・インターナショナル」で3度優勝、その後、USAチャンピオンシップでも優勝するなど、その画力の高さに定評がある。

Dragon76(左)とパートナーのAYAKOさん。Photo by Ben L@just_a_spectator

今回、描かれたのはアジア人の少年で、背景に「STOP ASIAN HATE」のメッセージが大きく迫る、力強い構図。「昨年のBLMムーブメントでも壁画を描きましたが、以前からアジア人差別はあると感じていました」。増えるアジア人への暴力行為に対し、「何か行動しなければ…」と考えたDragon76は、今回のビジュアルを制作してSNSで発信。

時を同じくしてベン氏から「イーストビレッジウォール」に誘われ、「この絵を壁画にしたい」と提案。ベン氏の協力の元、今回の設置に繋がった。

「共存」をテーマに描かれた3WTC48階のミューラル。今回の主人公は、左端のアジア人の少年。Photo courtesy of Dragon78

「いつも自分の作品は『共存』がテーマ。3WTC48階のミューラルでも『共存』をテーマに、様々な人種・性別の人がバンドを組んで旅をする様子を描きました。その中に登場させたアジア人の少年が、今回の主人公です。人種や性別、文化の違いを、リスペクトし合い、尊重しあえる未来を願っている少年。『未来を夢見る』という意味でも、少年をモチーフに描くことが効果的だと考えました」。

Dragon76の絵に頻繁に登場する「共存」を意味する「COEXIST(コエクジスト)」が、この少年の頬にも見て取れる。

少年の頬に描かれた「COEXIST(コエクジスト)」は「共存」を意味。Photo by Ben L@just_a_spectator

「世の中をより良い方向に変えるために、アーティストとしての才能を使いたい」と話すDragon76。

「この絵が、人種差別をなくすために声をあげて立ち上がり、勇気を与えるきっかけになればと思います。絵に共感し、共存の重要性を再認識してくれる人が増えれば嬉しい」と、その未来を願った。

「この絵が人種差別をなくすために声をあげて立ち上がり、勇気を与えるきっかけになれば」と願うDragon76、完成した壁画の前で。Photo by Ben L@just_a_spectator


STOP ASIAN HATE
■壁画の場所:75 Chrystie St.
www.dragon76art.com
■instagram.com/dragon76art
※今回の作品はインスタのBioからダウンロード(無料)が可能で、自由にプリントアウトや投稿などで利用できる。


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