2023年04月14日号 Vol.443

相米監督の軌跡を辿る
北米初の回顧上映
「相米慎二の世界:不朽の青春」

台風クラブ

ジャパン・ソサエティー(JS)が4月28日(金)から5月13日(土)まで、グローバス映画シリーズの一環として、「相米慎二の世界:不朽の青春」(Rites of Passage: The Films of Shinji Somai)と題した上映会を開催する。2001年、53歳の若さで亡くなった相米慎二監督の軌跡を辿る。日本語上映・英語字幕付き。

上映作品はまず、1985年の「台風クラブ」から。4K修復版で世界初上映となる。上映後には、オープニングナイト・パーティーが行われる。


相米監督が、その名を世に知らしめたのは「セーラー服と機関銃」(81年)だ。80年デビューの相米監督が、2作目にして興行的に大成功を収めた作品。

他に、「ションベン・ライダー」(83年)、「魚影の群れ」(83年)、「ラブホテル」(85年)、「光る女」(87年)、「東京上空いらっしゃいませ」(90年)の合計7本を上映する。

厳しい演出で、役者の力を引き出すことに長けていた相米は、多くの才能を早期から発掘・採用した。今回の上映作品に登場する薬師丸ひろ子、永瀬正敏、河合美智子、工藤夕貴、牧瀬里穂など。

さらにはその先駆的な作家性から、影響を受けた映画監督として相米を挙げる後出の監督も多い。岩井俊二、青山真治、黒沢清、濱口竜介などがいる。

日本ではこのような影響力を持ちながら、アメリカでは広く知られることなく生涯を終えた相米。2021年には、没後20年特集上映などを通して、若い世代の映画ファンが劇場に詰めかけ、今、新たな相米ブームが起こっている。

日本国外のファンの間でも人気が再発し、相米の再評価が進む中、このシリーズは待望の北米初の回顧上映となる。

セーラー服と機関銃

【上映作品詳細】
台風クラブ

台風の接近という出来事に重ね、思春期の中学生たちの苛立ちや混乱を描いた傑作。
当時13歳だった工藤夕貴をはじめとする若き才能が、様々なキャラクターの少年少女を熱演。教師・梅宮役の三浦友和などが脇を固める。

ションベン・ライダー
ヤクザの抗争に巻き込まれた中学生3人組と、彼らを手助けする一人の中年ヤクザを中心に繰り広げられる冒険譚。
3人組を演じるのは、河合美智子、永瀬正敏、坂上忍。ヤクザ役には藤竜也。原案は「太陽を盗んだ男」などで知られるレナード・シュレイダー、脚本は西岡琢也、チエコ・シュレイダー。

ラブホテル
出会いと再会を通し、元ホテトル嬢とワケありタクシー運転手の関係を描く。
70年代日活で助監督としてキャリアをスタートさせた相米が、初めて手掛けたロマンポルノ長編作品。山口百恵による挿入歌が印象的な作品は、「日活ロマンポルノ」後期の傑作。

セーラー服と機関銃
主演・薬師丸ひろ子の人気を不動のものとした作品。赤川次郎の同名小説を、鈴木清順監督作品でも知られる田中陽造が脚本化。遠い血縁関係にあるヤクザの親分が死に、急に自分が後継ぎだと知らされた女子高生が、ヤクザの子分たちと対抗組織に戦いを挑むという大胆なストーリーで、一世を風靡した。

光る女
東京に行ったきり帰らない許嫁を探しに、北海道から上京した大男が、歌を歌えなくなったクラブの歌姫と恋に落ちる、相米監督にしては異色のラブストーリー。
小檜山博の同名小説が原作、田中陽造の脚本。主役にはプロレスラーの武藤敬司が抜擢された。

魚影の群れ
下北半島の漁港・大間を舞台に、一人孤独に海に出る頑固なベテラン漁師・房次郎と、しっかり者の一人娘・トキ子、その恋人でトキ子との結婚を願い、房次郎から漁を教わることになる青年・俊一。3人の関係を軸に、厳しい北の海で過酷なマグロ漁に命を懸ける男たちの生き様と、それを支える女たちの愛を描いた感動作。
主演は緒形拳、夏目雅子、佐藤浩市、十朱幸代。

東京上空いらっしゃいませ
事故死したキャンペーンガールのユウは、天国で死神をだまして地上に戻ってくることに成功する。地上では、マネジャーの雨宮の助けで、自分の死を世間に隠したまま生前のユウとして活動を続けつつ、事故死の原因ともなったスポンサーの白雪へのリベンジを試みるが…。
牧瀬里穂のデビュー作。他に中井貴一、笑福亭鶴瓶。

★上映日程
■4月28日(金)
 7:00pm「台風クラブ」
 ※上映後オープニングパーティー
■4月29日(土)
 2:00pm「ションベン・ライダー」
 5:00pm「ラブホテル」
 7:00pm「セーラー服と機関銃」(完全版)
■5月5日(金)
 6:00pm「セーラー服と機関銃」(初公開版)
 8:30pm「光る女」
■5月12日(金)
 7:00pm「魚影の群れ」
■5月13日(土)
 2:00pm「光る女」
 5:00pm「ションベン・ライダー」
 7:30pm「東京上空いらっしゃいませ」

■会場:Japan Society
 333 E. 47th St.
■一般$15、学生/シニア$12、JS会員$10
■4月28日のみ上映・オープニングパーティー:
 一般$18、学生/シニア$15、JS会員$14
■ボックスオフィス
 TEL: 212-715-1258
www.japansociety.org


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