2021年3月26日号 Vol.394

コロナワクチン紙面勉強会
「一人でも多くの人が接種を」
日本クラブ・米国日本人医師会のウェビナーから

新型コロナウィルスのワクチンの接種が進むアメリカで、接種を心待ちにする人もいれば、不安を感じて躊躇する人もいる。ここでは、日本クラブと米国日本人医師会(JMSA)共催のコロナワクチン解説ウェビナーから、ワクチンの種類、効果と安全性、副反応などについてまとめた。(ささききん)

*ウェビナーは2月25日ライブ配信され、録画映像は日本クラブのウェブサイトで視聴可能

ウェビナーは、講師に感染症専門医の兒子(にご)真之医師(テキサス州立大学ヒューストン校感染症科助教授)を迎え、JMSA会長で病院のコロナ対策にも携わる柳澤貴裕医師(マウントサイナイ医科大学内分泌内科教授)と対談する形で進められた。両医師のメッセージは、「多くの人に接種してもらいたい」というもの。



■ワクチンの種類
新型コロナワクチンを語る上で、兒子医師はまずワクチンの種類を解説した(表参照)。米食品医薬品局(FDA)が緊急使用を認可している新型コロナワクチンは、いずれも非生ワクチン。ファイザーとモデルナがmRNAワクチン(表内③)で、ジョンソン&ジョンソンがDNAワクチン(表内④)。これら遺伝子素材のワクチンの認可は今回が初だ。

■mRNAワクチン
ファイザーとモデルナのmRNAワクチンは、新型コロナウイルスの突起(スパイク)部分のmRNAだけを使ったもの。投与されると体内でスパイク部分のタンパク質が形成され、人間の免疫細胞がそれを認識し、抗体が作られる。

「投与されたスパイク部分のmRNAは、約24時間で体内から消滅。その間にスパイク・タンパク質が形成され抗体が作られると、そのタンパク質も72時間で消滅。抗体だけが残ります」と兒子医師。

同じmRNAワクチンでも2社では多少違いがある。超低音保存が必要なファイザー製は、2月末FDAが、オプションとして2週間の期限付きで、通常の冷凍保存を認可している。1〜2回目の接種間隔は21日間。

一方のモデルナ製の保存温度は、普通の冷凍庫(マイナス20度)での保存が可能。1〜2回目の接種間隔は28日間と、ファイザーより少し長い。

1、2回目は、同じ会社のワクチンを打つこと。2度目の接種が遅れる場合は、いずれのワクチンも、1回目から6週間(42日間)以内に接種するよう、米疾病管理予防センター(CDC)は奨励している。

■mRNAワクチンの効果は?
ワクチン/偽薬投与後の「発症率」を、数カ月にわたり記録したファイザーのデータ(グラフ参照)によると、1回目の接種から14日目までは、ワクチン群と偽薬群でほとんど違いはない。ところがその後、偽薬群の発症率がどんどん上がるのに対し、ワクチン群は横ばい。3ヵ月後には両群の差は明白で、ワクチンの有効性が95%と判断された。しかも、偽薬群では感染者のうち9人が重症化したが、ワクチン群では1人だった。

兒子医師は、「インフルエンザ・ワクチン同様、接種後効果が出るまで2週間くらいかかります」と解説した。

■DNAワクチン
ジョンソン&ジョンソンがこの型(表の④)。人間に無害なウイルスを使って新型コロナウイルスのごく一部のDNAを体内の細胞内に運ぶ。そのDNAを基に体内でスパイク部分のmRNAが形成され、その後のメカニズムはmRNAワクチンと同じだ。人間のDNAにワクチンのDNAは組み込まれない。ワクチンのDNAが体内で再生されることもない。

このワクチンの特徴は、1回の接種で済むこと、南アフリカなど変異種への効果も期待されること、保存が比較的簡単であること(摂氏4度で3ヵ月間)。中程度の発症を57〜72%防ぎ、重度の発症を85%防ぎ、入院・死亡の予防率は100%だった。

「コロナウイルスのごく一部のDNA、mRNAを使っただけなので、接種によってコロナ感染は起こりません」と、兒子医師は強調する。

■安全性は?
普通は何十年もかけて開発されるワクチンが、今回はこれだけのスピードで認可されていることに、不安を感じる人も多い。しかし両医師は、「新型コロナワクチン開発には先行投資が非常に大きかったこと、また世界各地で患者数が多いため、短時間で大量のデータ収集が可能になったことが、スピード開発の背景にあります。数万人規模のワクチン研究データは、質・量ともに非常に信頼性の高いもの」と話す。

「まだ数ヵ月という短期間のデータしかないのも事実で、今後非常に稀な副反応が出てくる可能性がないとは言い切れませんが、接種のリスクと利益を比べた場合、利益の方が大きい、接種価値のあるワクチンだと考えられます」とも。

接種後の副反応は、DNA・mRNAワクチンともほぼ同じデータが報告されている。圧倒的に多いのが、打った場所が痛くなること。倦怠感や発熱(ほどんとは微熱)も報告されている。

■アレルギー反応への不安
ワクチンへのアレルギー反応も懸念されるところだが、両医師は「どんなワクチンも副反応、アレルギー反応が起こる可能性はあります」と話す。アレルギー反応は、ほとんど接種後すぐに起こるので、今回のコロナワクチンも、「接種後15〜30分その場で待機」の指示には、必ず従うこと。
重度のアレルギー反応としてアナフィラキシーショックがある。その発症頻度は、コロナワクチンの場合ファイザーが100万人に5人、モデルナが同2・5人と報告されている。インフルエンザの同1・53人に比べると多少頻度は高いが、HPVが同0・5人、破傷風が同2・89人、水痘が同6・93人と、どのワクチンも発症率はゼロではない。

兒子医師は「不安な人は、主治医とよく相談してください。病院やワクチン接種センターなど、万が一アレルギー反応が出た時に、すぐに対応できる施設で接種を受けることも大事です」と話す。


■誰のための接種か
兒子医師は感染症専門医として次のように話す。「感染を防ぎたい、重症化を防ぎたい、家族を守りたいと、接種する理由はたくさんあると思います。同時に、接種しないことのリスクも考えてほしい。接種せずに感染し、重症化するリスク、周囲に感染を広げるリスクです。地域・社会を挙げて接種することで集団免疫ができ、感染を食い止めることにつながります」

そして昨年春、コロナ病棟と化したマウントサイナイ病院で患者を治療した柳澤医師は、次のように話す。「兒子先生も私も、すでに接種を終えています。マウントサイナイ病院でも、医療従事者の94%がすでに接種を受け、重篤な副反応も報告されていません。現場の我々は、本来健康な人がコロナ感染で肝臓も腎臓も侵され、亡くなっていくのを見てきただけに、ワクチンの重要性を実感しています。今後どんどん接種対象が広がるでしょう。一人でも多くの人が接種してくれることを願います」

※Q&Aはこちら

【役立つ情報源】
CDC:www.cdc.gov
厚生労働省:www.mhlw.go.jp
こびナビ:https://covnavi.jp


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