2023年03月17日号 Vol.441

在米30年の集大成
邦楽の普及ひと筋に
石榑雅代 リサイタル

92年に日本を出た時に掲げた大きな目標は「琴を世界へ」。

家元からの派遣で、コネチカット州のウエスリアン大学音楽部の琴・三味線コース講師となり、あっという間に30年が過ぎた。当時のアメリカ人に琴・三味線は殆ど馴染みがなく、この国にどう根付かせたらいいのか、頭を抱えた。

自分で切り拓く以外に私の居場所はない…自分の選んだ道で、この国で輝いて居られるためには何をすべきか、それだけを常に考えてきた。

「今でも道行く人たちのほとんどは邦楽器に馴染みがない。まだまだ足りない、自分と楽器の知名度の低さにショック!を感じ、でもどうしたいいかわからないという焦燥感が付きまとうというのが正直な気持ちですね」


そんな孤独な闘いの中、今回のリサイタルは、石榑雅代在米30年の集大成として開催される。

「琴や三味線が作り出す音楽が、ただ重苦しく、古くさく、ダサい音楽ばかりではないことを証明するために、ピアノとのコラボや、即興を含む新しい感覚の曲で琴の新しい側面を見てもらうチャンスとなることを目指しています」

国際化が進み、ネットでの音楽配信が盛んになり、一般人の間での認知度は、渡米時とは比べものにならないほど一気に上がったのも確か。

「コロンビア大学にもhogakuというコースが設立され、2001年から10年間、学生の琴の指導にあたりました。卒業後も琴や三味線を続ける教え子たちがいることは、本当に嬉しい限りです。過去20年、私の教室には常に35〜45人、琴・三味線を学ぶ生徒がいます。それでもまだ特定の一部の方だけに知られているというのが現実」

琴・三味線の普及に賭ける新たな取り組みがこのリサイタルで形と成り、そして始まる。(塩)

■4月6日(木)7:30pm
■会場:Carnegie Hall / Weill Recital Hall
154 W. 57th St.
■$40、$50
■Carnegie charge:212-247-7800
■Box office:57th and 7th ave
Carnegiehall.org


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