2021年3月12日号 Vol.393

JSギャラリー再オープン
大工の伝統と歴史を知る
「技が形になる時:日本の大工道具展」

大工道具の標準編成(竹中大工道具館蔵) Standard set of tools, installation view at the Takenaka Carpentry Tools Museum, Kobe, Japan. Courtesy of Takenaka Carpentry Tools Museum

コロナ禍で昨年以降、臨時閉館していたジャパン・ソサエティー(JS)・ギャラリーが、3月11日(木)に再オープン。それに合わせ、展示会「技が形になる時:日本の大工道具」が、3月11日(木)から7月11日(日)までの4ヵ月間に渡り開催される。

再オープンを記念し、初日から3月28日(日)までは鑑賞料は無料となる(協賛・竹中工務店)。来館は、オンラインでの事前予約制となっている。詳細別記。



本展は、日本の伝統的な木造建築を創り出すのに使われてきた、多種多様な大工道具を紹介するもの。日本建造物の優美な「形」が、どのような道具・工程によって生み出されてきたかに光を当てる。

JS本部ビルは、1971年の竣工から今年で50周年を迎える。設計は日本建築の伝統とモダニズムの融合を図った建築家・吉村順三(よしむら・じゅんぞう)氏(1908〜97年)。京都の町屋にみられる格子と、アーチ型の柵(犬矢来)といった意匠を、スチールやコンクリートで構成した独特な建築で、2011年、NY市のランドマーク保存委員会により、市の歴史的建造物に指定されている。

堂宮大工棟梁・西岡常一 (1908-1995)Portrait of master carpenter (棟梁) Tsunekazu Nishioka of Nara. Courtesy of Takenaka Carpentry Tools Museum

JSにとって記念すべき年に開催する本展では、日本の大工職人の長年の経験、幅広い知識、高度に磨かれた技が、寺社や茶室、橋など、日本の建築文化の傑作にどのように昇華していったかを紐解く。

展示デザインの監修は、次世代の日本建築界をリードする建築家・藤本壮介(ふじもと・そうすけ)氏。建築を自然と対峙する人工物としてではなく、自然と融合し共存する関係性のなかで捉える藤本氏の視点を織り込んでいる。会場設定には、ブルックリンの建築設計事務所ポピュラー・アーキテクチャーの協力を得た。

「JSは、日米文化を繋ぐプラットフォームとして、過去と現在の接点であり続けてきました。伝統的な日本の職人技が現代建築家・藤本壮介氏の展示デザインによる、新しい光のもとで紹介するこの展示は、日本の大工の伝統と歴史を知り、現代社会に求められる新しい気づきを得る機会でもあります」と、JSギャラリーディレクター・神谷幸江氏は話している。

円覚寺舎利殿組物原寸模型、2019年 / 檜 / 鵤工舎制作(竹中大工道具館蔵) Interlocking parts for model of Engaku-ji Temple Shariden Interlocking Bracket Complex, 2019. Hinoki cypress. Courtesy of Ikaruga-Kōsha

初日となる3月11日は、東日本大震災から丸10年。災害の多い日本の地で、繰り返される破壊を乗り越え、復興を支えてきたクラフトマンシップの担い手たち。受け継がれてきた彼らの創造力が、本展で示される。

藤本壮介プロフィール
1971年北海道生まれ、東京大学工学部建築学科卒業。2000年藤本壮介建築設計事務所設立。14年フランス・モンペリエ国際コンペティションでの一等賞をはじめ受賞多数。19年には津田塾大学小平キャンパス設立計画の筆頭建築家に選ばれた。ロンドンのサーペンタインギャラリーの夏季別館(13年)、武蔵野美術大学美術館・図書館(10年)などを手がける。東日本大震災の際、破壊された家屋のための新住宅計画を手がけた日本チームの一員で、2012年にベネチア・ビエンナーレで金獅子賞を受賞。2025年の大阪世界万博でサイト・プロデューサーに指名されている。




When Practice Becomes Form:Carpentry Tools from Japan
■3月11日(木)〜7月11日(日)
木〜日11:00am-5:00pm、月〜水休館
■会場:Japan Society Gallery
333 E. 47th St. (bet. 1st & 2nd Aves)
■入場料:オンライン事前予約制
一般$12、シニア/学生/医療従事者$10
JS会員/16歳以下/障碍者と付添者は無料
※再オープン記念・鑑賞無料期間:3月11日(木)〜 28 日(日)
www.japansociety.org


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