2021年3月12日号 Vol.393

アート、大衆文化、商業を繋ぐ
カウズ、25年の活動を包括
「KAWS: WHAT PARTY」

既存の広告ポスターにアクリルで絵を描いたもの。カウズが注目されるきっかけとなった。UNTITLED (DKNY), 1997. © KAWS. (Photo: Farzad Owrang)

ブルックリンを拠点に活動する現代アーティスト、カウズ(KAWS :本名ブライアン・ドネリー)の個展「KAWS: WHAT PARTY」が、ブルックリン美術館で2月26日(金)から始まり9月5日(日)まで開催中だ。

目が「バツ(X)印」になったキャラクターで知られ、人気の「コンパニオン」を筆頭に、絵画、彫刻、コラボ商品、初期のドローイングなど、100を超えるアイテムを展示。25年のキャリアを5つのセクションに分けて紹介した回顧展だ。



本展タイトルは、キャラクター「チャム(CHUM)」の新シリーズ「WHAT PARTY」=表紙写真=から。タイヤメーカー「ミシュラン」のキャラクター「ミシュラン・マン」から着想を得たチャムは、これまでにも様々な形で登場。新作のチャムは、前屈みで肩を落とし、少しうつむいた姿勢で、「今の政治的・社会的な混乱に落胆し、ガッカリしている」ことを示している。ちなみに、パークアベニュー添いのシーグラム・ビル(375 Park Ave.)前には、高さ約6メートルの巨大なブロンズのチャムが、大きなため息をついている。

①(後方壁)URGE, 2020 (手前)SEPARATED, 2020. All photo cortesy : Brooklyn Museum

ユニークで丸みを帯びたキャラクターが「カワイイ」と人気のカウズ・アートだが、そのキャラクターたちは、問題を抱えているようにも見える。鮮やかな色で構成された「Urge(追い立てる)」=写真①=の前には、手で顔を覆ったコンパニオンの像「Separated(分離)」が絶望的な様子でうずくまり=写真①=、ピンク色のニルモ(セサミストリートのエルモから)を抱き抱えているコンパニオンの像「GONE(行ってしまった)」=写真②=は、ミケランジェロのピエタ(十字架から降ろされたイエスを抱える聖母マリアの像)を思い起こさせる。アメリカのカートゥーンで「バツ印」は、「死」や「無能力」を意味しているという。

②(左の壁)NEW MORNING, 2012 (正面)GONE, 2018

いずれにしても、カウズの人気は高く、コロナ禍での入場制限があるものの、3月28日までのチケットはすでに完売(3月8日現在)、同美術館が販売する関連グッズも飛ぶように売れている。アートと大衆文化を繋ぎ、有名ブランドとコラボしたこともまた、言語・文化の違いを超えたカウズ・アートの「強み」になっているようだ。


KAWS: WHAT PARTY
■9月5日(日)まで
■会場:Brooklyn Museum
 200 Eastern Parkway, Brooklyn
■大人$25、学生/シニア$16、4〜12歳$10 ※完全前売り予約制
www.brooklynmuseum.org


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