2019年3月15日号 Vol.345

神々を巡る壮大な物語
ニーベルングの指環 ①「ラインの黄金」「ワルキューレ」
メトロポリタン・オペラ

ラインの黄金
「ラインの黄金」A scene from Wagner's "Das Rheingold" in Robert Lepage's production, with Eric Owens as Alberich, Bryn Terfel as Wotan, and Richard Croft as Loge. Photo: Ken Howard/Metropolitan Opera

ワルキューレ
「ワルキューレ」Eva-Maria Westbroek as Sieglinde and Stuart Skelton as Siegmund in Wagner's "Die Walküre." Photo: Ken Howard/Met Operan


ワーグナー・ファン待望の超大作「ニーベルングの指環」(ラインの黄金、ワルキューレ、ジークフリート、神々の黄昏の4部作)が久々に再演される。神々を巡る壮大な物語は、「出雲の日本神話」にも酷似した場面が多々あり興味深い。また映画「指輪物語」、「スターウォーズ」などにも大いに影響を与え、SFの元祖とも言える。一度聴いたら忘れられない強烈な個性の音楽は、映画やコマーシャルでもポピュラーだ。世界で最も美しいサーカスと言われる「シルク・ド・ソレイユ」を手掛けたロベール・ルパージュの奇想天外な舞台演出に、世界各国からワーグナー歌手のエキスパートたちが集結してMETならではのスケールで繰り広げられる超スペクタクル・オペラ。
今回は4部作の内、「ラインの黄金」と「ワルキューレ」を紹介しよう。

ラインの黄金
▼あらすじ

神話の時代、ライン川の3人の乙女たちに守られている黄金を、地底に住むニーベルング族の小人アルベリヒが略奪してしまう。ラインの乙女たちに振られたアルベリヒは、愛を断念した者だけがその黄金で「世界征服ができる指輪を作ることができる」という言い伝えを実行する。
神々の長ヴォータンは、巨人族の兄弟にヴァルハラ城を造らせ、その報酬に美の神フライアを差し出す手はずだったが、代わりに火の神ローゲの入れ知恵でアルベリヒから奪った黄金の指環を渡してしまう。怒ったアルベリヒは、指環に呪いを掛ける。巨人の兄弟は指輪を奪い合い、弟ファフナーは、兄のファゾルトを殺してしまう。ヴォータンとその妻フリッカや神々たちは新築されたヴァルハラ城へと入場して行く。

ワルキューレ
ヴォータンが智の女神エルダに産ませた9人の娘たち。戦場で倒れた勇士たちをヴァルハラ城に運んでくる役目で、馬にまたがって空中を駆け巡る。第3幕の前奏曲「ワルキューレの騎行」は、あまりにも有名。
▼あらすじ
ヴォータンが人間の女性に産ませた双子の妹ジークリンデと兄ジークムントは、子供の頃はぐれていたが森の中の一軒家で再会し、互いに惹かれ合う。帰宅したジークリンデの夫フンディングは、ジークムントに敵意を抱き決闘を申し込む。ジークムントは、庭のトネリコの木に突き刺さった、誰も抜くことのできなかった霊剣ノートゥングを見事に抜き取った。
ヴォータンの妻フリッカは兄妹の禁断の愛を責め、ジークムントの敵でもあるフンディングに彼を殺させるよう迫る。ヴォータンの娘で戦乙女ワルキューレのブリュンヒルデは、父からジークムントを倒すよう命じられるが、兄妹の愛に感動して彼らを助けようとする。だが、ヴォータンはノートゥングを打ち砕き、ジークムントは倒れる。
一方、ジークリンデは兄の子を身ごもっており、ブリュンヒルデが森に逃がす。父に背いたブリュンヒルデは、恐れを知らない若者だけが助けられる運命を掛けられ岩山で炎に包まれ永い眠りに入る。(針ケ谷郁)

DER RING DES NIBELUNGEN ニーベルングの指環(4部作)
ラインの黄金/ワルキューレ/ジークフリート/神々の黄昏
○サイクル1:3月9日(M)・30日(M)・4月13日(M)・27日(M)
○サイクル2:4月29日・30日・5月2日・4日
○サイクル3:5月6日・7日・9日・11日

DAS RHEINGOLD ラインの黄金
■単独公演:3月14日
■リヒャルト・ワーグナー作曲 ドイツ語上演
■初演:1869年9月22日バイエルン宮廷歌劇場
■演出:ロベール・ルパージュ
■指揮:フィリップ・ジョルダン
■原作:中世ドイツ英雄叙事詩「ニーベルンゲンの歌」
 ヴェルズンガサガ、古代北
■欧歌謡集「エッダ」などを基に作曲
■配役:ヴォータン(神々の長):グリア・グリムスリー
フリッカ(ヴォータンの正妻・結婚の神):ジェイミー・バートン
フライア(フリッカの妹・美の女神):ウェンディ・ブリン・ハーマー
アルベリヒ(ニーベルング族の小人):トマス・コニエチュニー
ミーメ(小人族・弟):ゲルハルト・ジーゲル
ファゾルト(巨人族の兄):ギュンター・ジーゲル
ファフナー(巨人族の弟):ドミトリー・ベロセルスキー
エルダ(智の女神):カレン・カーギル
ローゲ(火の神):ノルベルト・エルンスト

DIE WALKURE ワルキューレ
■単独公演:3月24日・4月25日
■初演:1870年6月26日ミュンヘン宮廷歌劇場
■配役:ブリュンヒルデ:クリスティーン・ガーキー
ジークリンデ:エヴァ・マリア・ヴェストブルック
ジークムント:ステュアート・スケルトン
フンディング:ギュンター・グロイスベック

■212-362-6000
www.metoperafamily.org


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