2020年3月6日号 Vol.369

KAORUKO個展「アニミズム」
ポジティブなフェミニズム描く



ニューヨーク在住のアーティスト、KAORUKO(カオルコ)が2月27日(木)から3月21日(土)まで、チェルシーのギャラリーで、個展「Animism(アニミズム)」を開催している。

KAORUKOは、90年代にソニーミュージックのアート部門に所属、アーティストとして活動を始める。童話作家の五味太郎に師事した以外はまったくの独学で、独自のスタイルを生み出した。2007年からニューヨークを拠点に制作活動を続けている。

「地元」ニューヨークでの個展は今回で5回目。展示作品は、近年、現代を生きる女性を投影した、新しい形のポジティブなフェミニズムを描いた作品群だ。明治、大正時代の着物の文様をコラージュすることにより、日本文化を反映させる表現方法で知られるKAORUKOは、ニューヨークのファインアート界で、独特の存在感を放っている。

自分が何を取り入れるべきか
何を表現すべきかを追求

本格的にアーティストを目指すきっかけとなったのが、パルコが主催した「アーバナート展」で賞を取ったことだった。

「日本でアーティストとして活動していた頃は、スカルプチャーやパッケージデザインなどを手がけていました。ある日、北野武さんの番組『誰でもピカソ』に出演した際、村上隆さんとお話しする機会に恵まれました」
村上氏から、ルイ・ヴィトンとのコラボや、ロックフェラー・センターでの大掛かりな展示などを成功させた話を聞き、「私もNYで勝負してみたい!」と会社に相談。その後、NYでの個展開催など、様々なチャンスに恵まれた。「日本はアートに対する需要があまりにも無い」と常々思っていたKAORUKOは、「アーティストとして海外で活動する選択肢もあるんだ」と、来米を決意した。

今回のテーマである「アニミズム」とは、人間だけでなく動植物や無生物にも霊魂が宿っているという思想のこと。日本には古来から「自然のもの全てには神が宿っている」という「八百万の神」という考え方があり、自然物や自然現象を崇拝してきた。
「日本を代表するアニメといえば、スタジオ・ジブリ作品や鉄腕アトム、ドラエもんなどが世界的に有名です。これらの作品は、日本人の『アニミズム』の思想があってこそ成り立っているのではないかと考えています。『となりのトトロ』で登場する森の精霊・トトロなどは、日本の伝統的なアニミズムの象徴を基に表現。鉄腕アトムやドラえもんは、食事をし会話をする…ロボットでありながら人間と同じ様に魂が宿っているように描写されています。改めて周囲を見渡せば、縁起をかつぐ狛犬や鯉の滝登り、鶴のおりがみなど、日本人にとっての『アニミズム』は、ごく身近にあるものであり、私たちは幼い頃から無意識のうちに『自然』と共存してきたのではないでしょうか」
KAORUKOの作品には、そんな無数の「思想」が散りばめられている。「狛犬」は古くから門構えや家に飾られ、家や家族を守護。「鯉」は滝を天まで昇って龍になると言う言い伝えから成功祈願を意味。「折り鶴」は想いを込めて折ることから病が治ると信じられ、平癒・平和・非核のシンボルだ。KAORUKOは、そんな日本の「アニミズム」を、現代風に昇華させた。

また、作品には明治、大正時代の着物の文様などもコラージュされている。
「NYで最初に個展をした頃でした。ミュージアムやギャラリーに行ったのですが、その時、自分の絵に物足りなさを感じたんです。自分が何を取り入れるべきか、何をもっと表現していくべきなのかを考えた時、着物の柄を取り入れる事によって素晴らしい日本の文化を伝えらたら…と考えました」

2012年、アート雑誌「New American Paintings」で「アメリカで活動する注目のアーティストの一人」として紹介され、同誌の表紙を飾った。どんなところが評価されたと思うかという問いに、「今までにない作品を目指して来たところでしょうか」と冷静に分析する。

「科学は発展しましたが、その代償として自然破壊が叫ばれるようになりました。 アニミズム思想に基づけば、過剰な自然破壊はとてもできないはず。今こそ、アニミズムの思想を思い出す時だと思っています。存在する全てのものに敬意を払い、感謝を忘れないこと。自然環境の問題にも、もっと触れていけたらと思っています」とKAORUKO。今展の「アニミズム」は彼女だからこそ表現できる世界観だ。

■2月27日(木)〜3月21日(土)
■会場:Lyons Wier Gallery
 542 W. 24th St. (bet. 10th & 11th Aves.)
■TEL: 212.242.6220
www.lyonswiergallery.com



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