2020年3月6日号 Vol.369

カンペと藤村がMETデビュー
話題のフランソワ・ジラール新演出
「さまよえるオランダ人」


A scene from Wagner's "Der Fliegende Holländer." Photos: Ken Howard / Met Opera


Evgeny Nikitin as the Dutchman in Wagner's "Der Fliegende Holländer."


今シーズンの新演出を手掛けるのは、カナダ出身の映画監督・演出家のフランソワ・ジラール。ジェニー賞(カナダ版のアカデミー賞)を8部門で総なめにした「レッド・ヴァイオリン」をはじめ、「グレン・グールドをめぐる32章」「ボーイソプラノただひとつの歌声」などの音楽作品の他、日・加・伊・英・仏の合同製作作品「シルク」(役所広司、中谷美紀など日本人が多数出演、坂本龍一が音楽担当)などの映画作品の監督を担当。2011年には、井上靖の小説「猟銃」を舞台化したり、2007年には、東京ディズニーリゾートで、日本初の「シルク・ドゥ・ソレイユ」の常設劇場の演出も手掛けるなど多岐にわたる活躍を果たした。
METでは、20 12~13年シーズンのワーグナー「パルジファル」でオペラ演出デビューを飾った。ワレリー・ゲルギエフのタクトによるドラマティックで壮大なワーグナーの音楽とのコラボが楽しみ。
オランダ人に扮するブリン・ターフェルは、「ニーベルングの指環」のヴォータンで重厚な声と演技は立証済み。
また今回、国際的にワーグナー歌手としての高い評価を得ているゼンタ役のアニヤ・カンペとマリー役の藤村実穂子の2人が、METデビューを果たす。

▼あらすじ
18世紀ごろのノルウェーのフィヨルド海岸地方が舞台。
神を冒涜した呪いで海をさまよう幽霊船のオランダ人船長は、7年に1度の上陸が許された機会にノルウェー船のダーラント船長に出会う。オランダ人は貞節を捧げる女性が現れると呪いが解けるため、ダーラントに娘がいると聞くと求婚したいと財宝を見せて申し出る。
一方、娘のゼンタのほうは、エリックという青年に愛されていたにもかかわらず、居間に掛かっている伝説の「さまよえるオランダ人船長」の肖像画の虜になっていた。ゼンタに夢中なエリックは、愛を誓ったのだからオランダ人と結婚しないでくれとゼンタにすがる。それを聞いたオランダ人は絶望して自分の正体を明かし帆を張り出航する。
ゼンタはさまよえるオランダ人に永遠の愛を捧げると叫んで海に身を投げる。ゼンタの純愛を得たことでオランダ人にかかっていた呪いは消え、もはやさまようことなく死を迎えて沈没する。ゼンタとオランダ人はカタルシスを得て昇天する。(針ケ谷郁)

Der Fliegende Holländer 新演出 ドイツ語上演
■3月2日(GALA) / 6日 / 10日 / 14日(M) / 18日 / 21日 / 24日 / 27日
■リヒャルト・ワーグナー作曲
■初演:1843年1月2日ドレスデン宮廷歌劇場
■原作:北欧の幽霊船伝説、ハイネの小説、
 ハウフの「幽霊船物語」などを基に作曲者自身が台本を書いた
■演出:フランソワ・ジラール
■指揮:ワレリー・ゲルギエフ
■配役:オランダ人:ブリン・ターフェル
ゼンタ:アニヤ・カンペ
マリー:藤村実穂子
ダーラント:フランツ=ヨゼフ・ゼリック
エリック:セルゲイ・スコホドフ
舵手:デイヴィッド・ポルティッヨ
■会場:The Metropolitan Opera House
 30 Lincoln Center Plaza
■212-362-6000
metopera.org


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