2022年2月25日号 Vol.416

壮大なスケール誇るヴェルディのオペラ
MET史上初のフランス語上演
「ドン・カルロス」

Matthew Polenzani in the title role of Verdi's "Don Carlos." Photo: Ken Howard / Met Opera

ヴェルディ(1813〜1901)の中期53歳の作品。イタリア語の改訂版が一般的だが、今回は、ヴェルディのオペラの中でも、最長の壮大なスケールを誇るフランス語のオリジナル版。フランス語上演は、MET史上初となる。

このニュースに一番興奮したのが、MET音楽監督で指揮を務める、ヤニック・ネゼ=セガン。長年熱望してきたオリジナル作品が実現するためだ。そして新演出を手掛けるデイヴィッド・マクヴィカーは、METで11作目の演出に挑む。16世紀スペイン異端審問を背景に、スペイン王族の間で繰り広げられる愛と葛藤、陰謀、絶望など様々な心理が織りなす人間模様が主題だ。



キャストは、ドン・カルロスを演じるマシュー・ポレンザーニを筆頭に、悲劇のヒロインにソーニャ・ヨンチェヴァなど、6人の登場人物がこの複雑なドラマ展開に絡む。美貌のエボリ公女には、当初予定されていたエリーナ・ガランチャが残念ながら降板し、2007年のMETオーディションの覇者、ジェイミー・バートンが代役に入る。また、チャールズ・エドワーズの舞台美術、ブリジット・ライフェンシュトゥエルの衣装も、このオペラに相応しいイメージのデザインを練り上げて演出を盛り上げる。

2月28日のガラ・プレミア公演を皮切りに、3月26日まで8回公演を予定。

Sonya Yoncheva as Élisabeth and Etienne Dupuis as Rodrigue in Verdi's "Don Carlos." Photo: Ken Howard / Met Opera

あらすじ

16世紀スペインが舞台。ドン・カルロスは旅の途中、フォンテンブローでフランス王アンリ2世の娘エリザベートに出会い、互いに惹かれる。しかし、エリザベートは新たな講和条約に従って父王フィリップ2世に嫁ぐ。絶望したカルロスは、彼の理解者であるポーザ公爵ロドリーグの勧めで新教徒が迫害されているフランドルの統治を望むが、それは父に対する反乱だった。また、カルロスに想いを寄せるエボリ公女が、エリザベートを陥れようと画策を練る。カルロスと妻の仲を疑うフィリップ2世は反逆者カルロスの処分を大審問官に相談し、死罪を言い渡す。エリザベートは修道院に入り、カルロスの次の世界で幸せを願う。カルロスが追い込まれた時、突然祖父の皇帝カール5世の霊が現れカルロスを墓内に引きいれると、「地上の悲しみは修道院に持ち込めるが、心の苦しみは天国でのみ鎮められる」と語られ、幕となる。

Eric Owens as King Philippe II in Verdi's "Don Carlos." Photo: Ken Howard / Met Opera

コロナ感染予防に厳格なルール導入

メトロポリタン歌劇場の総支配人ピーター・ゲルブは、今シーズンのオペラ公演の実施・開催に厳格なルールを適用すると発表。具体的には、①観客は指定された場所での飲食を除き、歌劇場内では常にフェイスマスクを着用すること ②基本的に観客は全員がブースターショットの接種が義務付けられる。

DON CARLOS ドン・カルロス
■新演出/フランス語上演/4時間55分(休憩2回)
■作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
■原作:シラーの戯曲(1787年)に基づく
■初演:1867年パリ、オペラ座
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:ヤニック・ネゼ=セガン
■出演:ドン・カルロス:マシュー・ポレンザーニ
王妃エリザベート:ソニア・ヨンチェヴァ
エボリ公女:ジェイミー・バートン
フィリップ2世:エリック・オーウェンズ
ロドリーグ:エティエンヌ・デュピュイ
大審問官:ジョン・レリエ
■2月28日、3月3日、6日*、10日、13日*、18日、22日、26日* (*はマチネー)
www.metopera.org


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