2023年02月24日号 Vol.440

失敗は成功のもと!
転んだことから学ぶ
「失敗博物館」

①美容器具「リジュベニーク」 All photos courtesy of Museum Of Failure

世界中から失敗した製品やサービスを集めた巡回展「失敗博物館(Museum of Failure)」が3月17日(金)から、ブルックリンのインダストリーシティで行われる。

同展は、創設者で臨床心理士のサミュエル・ウエスト氏が自らコレクションしたものを解説付きで展示。開発に「失敗」はつきもので、来場者に「失敗」の重要性を学ばせ、体験する機会を提供している。

2017年6月、スウェーデンで最初にお披露目された後、ロサンゼルス、ハリウッド、ワシントンDC、ミネアポリス、上海、パリなどでも開催。ユニークなコンセプトで集められた品々は、各地で話題となった。今回は、150点を超えるアイテムとサービスがブルックリンに集結する。



アメリカの女優、リンダ・エヴァンスを商品モデルに起用し、1990年に発売された「リジュベニーク(Rejuvenique)=若返らせるの意」=写真①=。表情筋を微弱電流で引き締めるという美容器具で、一回15分、週に3〜4回の頻度でマスクを顔に固定して使用する。安全性が承認されたことはなく、あるユーザーから、「まるで1000匹のアリに顔を噛まれているように感じる」というレビューが寄せられていた。ホラー映画「13日の金曜日」から抜け出したような美容マスクは、流通期間約12ヵ月で姿を消した。

②「クリスタルペプシ」(左)と「ニュー・コーク」

1992年、ペプシコ社が社運をかけて発売した無色透明なコーラ飲料「クリスタルペプシ(Crystal Pepsi)=写真②左=。カフェインフリーで従来品より砂糖が少なく健康的である点を強調。キャッチコピー「こんな味、見たことない(You've never seen a taste like this)」を掲げ、4000万ドルのキャンペーンを展開した。

発売直後は珍しさも手伝い、売れ行きは好調だったが、2年後には製造中止。消費者が慣れ親しんだ「ペプシ」の味ではなかったことが、最大の敗因だった。

その後、ファンからの嘆願で2016年に限定販売。すぐに完売したことから2017年にも売り出されていた。

ペプシのライバルといえばコカ・コーラだ。両者の対決は1975年、ペプシコ社が企画した比較広告戦略の一環「ペプシ・チャレンジ」でエスカレート。ブランド名を隠したコーラ飲料を実際に飲み比べてもらうものでアメリカと日本で実施、結果はペプシに軍配が上がった。|

それを受け、コカ・コーラは味を改革。1985年に「ニュー・コーク(NEW Coke)」=写真②右=を誕生させた。ところが、新しい味は「クリスタルペプシ」同様、コカ・コーラ愛好者に受け入れられず、わずか3ヵ月後には元の味を「コカ・コーラ・クラシック」として販売。

その後、「ニュー・コーク」は1990年に「コークII(Coke II)」と改名、2002年に製造中止となった。

③ポータブルレコードプレーヤー「サウンドバーガー」

1983年、オーディオテクニカ社が発売したポータブル・レコードプレーヤー「サウンドバーガー」=写真③=。「失敗」ではないものの、レコードの衰退と共に生産中止。近年、再びレコードが注目されるようになり、2022年に限定7000台をリリース。あっという間に完売したことから、今春、新しく限定版の販売が予定されている。

その他、洗練されたデザインが売りのアップル社が生んだ初代iMACの付属マウス「ホッケーパック(Hockey Puck)」=写真④=は、人間工学に基づいておらず、快適に使用できなかったことから「史上最悪のマウス」と酷評。

グーグル社が20 13年に発表した内蔵カメラと音声コントロール、スクリーン機能を備えたスマートグラス「グーグルグラス(Google Glass)」=表紙写真=は、1500ドルという高価な「試作品」にすぎず、ユーザーの期待を大きく裏切った。

④初代iMacの付属マウス「ホッケーパック」

会場には、来場者が最大の失敗をポストイットに書き留める「告白エリア」も登場。ウエスト氏もまた、「インターネットのドメイン名を取得する際、うっかり『museum』のスペルを間違えた」と告白している。

「誰でも転ぶことはあります。最も重要なのは、そこから立ち上がる方法を知ること。失敗は祝うべきものなのです」と、ウエスト氏。

奇妙で役に立たなかったものの、「進歩」への道を切り開いた革新的なアイデアのショーケースだ。

Museum Of Failure(MOF)
■3月17日(金)〜5月14日(日)
 (※6月18日まで延期の可能性有り)
■会場:Industry City
 900 Third Avenue, Brooklyn
■大人$20.50〜子供/学生/シニア$16.50〜
 ※大人同伴の6歳以下は入場無料
thefailuremuseum.com/new-york


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