2019年2月22日号 Vol.344

ウィーン・フィル4講演、指揮者はベテラン2人
カーネギーホールで

アダム・フィッシャー
アダム・フィッシャー Adam Fischer (Photo © Csibi Szilvia)

マイケル・ティルソン・トーマス
マイケル・ティルソン・トーマス Michael Tilson Thomas (Photo © Spencer Lowell)

アーモリー・ショー
レオニダス・カヴァコス(左)とイゴール・レヴィット Leonidas Kavakos (Photo © Marco Borggreve) and Igor Levit (Photo © Robbie Lawrence)


ニューヨークのクラシック音楽ファンが毎春楽しみにしているのが、3月にカーネギーホールにやってくるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサート。今シーズンはなんと計4回のフルコンサートを行う。指揮者もベテランの2人、アダム・フィッシャーとマイケル・ティルソン・トーマスの2人を楽団が招聘。今回はこのウィーンフィルのカーネギー公演に焦点を絞って紹介したい。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の起源は、1842年の3月に帝国王立宮廷歌劇場(現・ウィーン国立歌劇場)のメンバーが、ウィーンの中央にあるホーフブルク宮殿内のレドゥーテンザールで行ったコンサートだ。1870年には、世界で最も音響の良いホールのひとつとされるウィーン楽友協会大ホールが完成、1870/71年シーズンから同ホールを本拠地とし、以来、長きにわたって世界の管弦楽シーンをリードする活躍を続けてきている。

ウィーンフィルのコンサートは、グスタフ・マーラー、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤンといった大巨匠指揮者が深く関わり、重要なコンサートでタクトをとってきた。日本でも人気の高い同オーケストラ、初来日は1956年だった。

さてウィーンフィルは、他の世界の著名オーケストラとは違う、独自の運営方針を取っていることでも知られる。
まず、このオーケストラは一つの完全に独立した管弦楽団ではなく、その母体はウィーン国立歌劇場管弦楽団(ウィーン国立歌劇場のオーケストラ)。その中から選ばれた団員が「自主運営」しているのがウィーンフィルだ。したがって、他のオーケストラや音楽家とは違い、マネージャーを持たない。
また、1933年以来、常任指揮者のポストを置いていない。さらに、演奏プログラム、及び招聘する指揮者、ゲストアーティストは全て楽団が自主決定し、楽団長などのポストも選挙によって選ばれる。この運営方針をウィーンフィルは自ら「民主的自主運営(Democratic Self-Administration)」と呼んで自負している。
このような、自主独立の気風の高いウィーンフィルが実際にコンサートで奏でる音も、いわゆる「ヴィエナ・サウンド」と呼ばれる実に独特なものだ。一般には19世紀末から20世紀初頭にかけて、このサウンドが完成されたとみなされている。簡潔に言えば、この上なく滑らかなレガートとフレージング、まるでベルベットのような艶のある音色、ということになろうか。不思議なまでに美しいサウンドは21世紀の現在でも健在。その秘密は、使用されている楽器(特に管楽器)が他のオーケストラのものとはかなり違うことが挙げられるが、団員が団員を長い年月をかけて直接指導するという、この楽団独自の伝統に負うところが大きいとされる。

気になるプログラムだが、ウィーンフィルが得意としてきた作曲家の作品が盛りだくさんな点だ。
2日は、バルトークの「二つの映像」、ベートーベンのレオノーラ序曲第3番と交響曲第3番「エロイカ」。3日は、ハイドンの交響曲第97番、モーツァルトのバイオリン協奏曲第5番「トルコ風」(ソリストにレオニダス・カヴァコス)と交響曲第41番「ジュピター」。5日は、アイブスの「戦没将兵追悼記念日」、ベートーベンのピアノ協奏曲第3番(ソリストにイゴール・レヴィット)、ブラームスの交響曲第2番。6日は、マーラーが作曲した最後の交響曲、第9番。指揮は2日と3日がアダム・フィッシャー、5日と6日がマイケル・ティルソン・トーマス。(木川貴幸)

Vienna Philharmonic Orchestra
■3月2日(土)8pm / 3日(日)2pm
 5日(火)8pm / 6日(水)8pm
■会場:カーギーホール
 Stern Auditorium / Perelman Stage
 881 Seventh Ave
■212-247-7800 ■$38.50〜
www.carnegiehall.org



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