2023年02月10日号 Vol.439

鈴木清順監督・生誕百周年
JSで記念上映会開催中

河内カルメン© 1966 Nikkatsu Corporation

ジャパン・ソサエティー(JS)と国際交流基金が、映画監督・鈴木清順の生誕百周年を記念し、約60作品の中から厳選した6作品を、JS内劇場で特別上映している。日本語上映、英語字幕。

アルバータ大学現代日本文化研究助教授ウィリアム・キャロル氏をゲスト・キュレーターに迎え、同氏の著作「鈴木清順と戦後日本映画」(コロンビア大学出版、2022年)の出版に合わせて企画されたシリーズだ。

鈴木清順監督(1923〜20 17年)は、日本映画界の異端児的存在で、その先鋭的なスタイルと予測不可能な作風で知られる。独特な映像美は「清順美学」と呼ばれ、後世の映像作家たちに大きな影響を与えた。

2月4日から始まったこのシリーズ、同10日(金)には「河内カルメン」、11日(土)には「悲愁物語」が上映される。



キャロル氏は今回のシリーズについて以下のように述べている。

「鈴木は、日本の映画産業と文化の変貌に大きな役割を果たした。日活の歯車的な存在としてキャリアをスタートし、スタジオのニーズに合わせて様々なジャンルの映画を多い年で年に5本も監督していた。日活時代の最後の数年間で花開き、後に日本のシネフィル文化の重要人物となる鈴木の、独自のスタイルの種が、初期の作品からも感じられる。鈴木の日活からの解雇は、スタジオシステムの崩壊と、自主映画制作の台頭の分岐点となった。鈴木はその10年後、最も大胆で、かつ実験的な作品でカムバックしている」

チケット購入・詳細はウェブサイトで確認を。

悲愁物語 © 1977 “Story of Sorrow and Sadness” Film Partners

■2月10日(金)7:00pm
「河内カルメン」Carmen from Kawachi
◯1966年/80分/35mm /モノクロ
◯監督:鈴木清順
◯出演:野川由美子、伊藤るり子、宮城千賀子 他
野川由美子(「肉体の門」「春婦伝」)最後の鈴木作品主演。関西の田舎に住む若い女性・露子(野川)の人生を描く。大阪に移り住んだ露子は、女給、ホステス、ファッションモデルなど、不当に搾取されながらも成功のチャンスを求めて突き進む。ビゼーのオペラ「カルメン」をモチーフに、メロドラマとシュールな演出で社会批判を展開し、肉体と官能の魅力に溢れた三部作の最終作。

■2月11日(土)7:00pm
「悲愁物語」A Tale of Sorrow and Sadness
◯1977年/93分/35mm/カラー
◯監督:鈴木清順
◯出演:白木葉子、原田芳雄、岡田眞澄、和田浩治 他
「分からない映画を作る監督」と日活の専属契約を破棄された鈴木清順が、テレビ界から10年ぶりに映画監督に復帰した作品。「あしたのジョー」で知られるスポーツ漫画の巨匠・梶原一騎の原作を基に、広告やセレブ文化を批判した異色の作品。広告の売り上げを伸ばすために新しいカバーガールを必要としていた大手スポーツ雑誌の上層部は、「若くビキニが似合うゴルファー」というスポーツスターを輩出する。ところが近所の主婦たちの嫉妬の対象となり、このスターの弱みを握った主婦によって脅迫されることになる。シュールなサイコスリラーへと急旋回。

Seijun Suzuki Centennial
■会場:Japan Society
 333 E. 47th St.(bet. 1st & 2nd Aves.)
■一般$15、学生・シニア$12、JS会員$10
■ボックスオフィス:212-715-1258
www.japansociety.org


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