2020年2月7日号 Vol.367

METで蘇るヘンデルの名作
オールスター揃い踏み
「アグリッピーナ」


Scenes from Handel's "Agrippina." Photo: Antoni Bofill / Barcelona's Gran Teatre del Liceu


Joyce DiDonato in the title role of Handel's "Agrippina." Photo: Paola Kudacki / Met Opera


ローマを燃やしたと言われる暴君、皇帝ネロの母親アグリッピーナを題材に枢機卿ヴィンチェンツォ・グリマーニが台本を書いた。物語りの筋書とは裏腹に、社会風刺のきいたブラック・コメディで、最高傑作の台本と言われている。年末に頻繁に演奏されるハレルヤで有名なオラトリオが代表作である、ヘンデル(1685~1759年、ドイツ生まれ、のちにイギリスに帰化)がイタリアに滞在した24歳の頃に手掛けたオペラ作品。1709年にヴェネツィアで上演された「アグリッピーナ」は大成功を収め、初日から連続27回も上演された。イタリア・オペラの中心地のひとつであるヴェネツィアで外国人の作品がこれほど成功するのは異例であった。
MET初演にあたる演出を託されたマクヴィカーは、「イル・トロヴァトーレ」で2009年にMETデビューを果たしたのち、ドニゼッティのチューダー朝女王3部作(「アンナ・ボレーナ」、「マリア・ストゥアルダ」、「ロベルト・デヴリュー」)や「トスカ」などで次々と新演出を手掛けている。今回の演出では、時代を現在に置き換えている。
さて、悪女アグリッピーナに扮するジョイス・ディドナートは、バロックの超絶技巧を持ち前の美声と演技力で撃破するだろう。美女ポッペアには、舞台映えする容姿のコロラトゥーラ・ソプラノ、ブレンダ・レイが注目のMETデビューを果たす。さらにヘンデルの時代に全盛だったカストラートを彷彿させるのがオットーネを演じるイェスティン・デイヴィーズ。
オールスター揃い踏みで、ヘンデルの「アグリッピーナ」が蘇る!

▼あらすじ
紀元1世紀のローマ帝国。第4代ローマ皇帝クラウディオの妃となったアグリッピーナだが、2人の間に世継ぎはいない。アグリッピーナは、夫が遭難したとの知らせに、盲愛している連れ子のネローネを帝位につけようと企てる。
だがクラウディオは武将オットーネに命を救われて帰還。クラウディオは、かねてからオットーネに帝位を約束していた。オットーネは帝位より美女ポッペアが欲しいと、アグリッピーナに打ち明ける。しかし、皇帝クラウディオもまたポッペアを寵愛していた。オットーネが帝位を諦めたため、アグリッピーナの目論見通り、ネローネが皇太子に選ばれる。(針ケ谷郁)

AGRIPPINA MET初演 イタリア語上演
■2月6日/9日(M)/13日/17日/22日/25日/29日(M)
3月3日/7日
■ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル作曲
■初演:1709年12月26日サン・ジョヴァンニ・グリソストモ劇場(ヴェネツィア)
■演出:デイヴィッド・マクヴィカー
■指揮:ハリー・ビケット
■配役:アグリッピーナ:ジョイス・ディドナート
ネローネ:ケイト・リンジー
オットーネ:イェスティン・デイヴィーズ
クラウディオ:マシュー・ローズ
ポッペア:ブレンダ・レイ
パランテ:ダンカン・ロック
■会場:The Metropolitan Opera House
30 Lincoln Center Plaza
■212-362-6000
metopera.org



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